サッカー日本代表、エクアドル戦は相手戦術への対策なしで三笘薫も不発。最終強化段階も攻守両面でポジティブ要素が見当たらない (4ページ目)

  • 中山 淳●文 Text by Nakayama Atsushi
  • 中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

三笘薫不発のカラクリ

 日本の頼みの綱は、この試合で先発した左ウイングの三笘によるドリブル突破だったが、残念ながら、その武器はほとんど不発に終わってしまった。

 この試合で、三笘が前を向いてドリブルを仕掛けられる状況は、前半で9回あった。しかし、アタッキングサード手前で前を向けたのは、早いタイミングでクロスを供給し、ゴール前で南野がヘディングシュートした前半7分のシーンを含め、3回だけ。それ以外はハーフライン前後の左ミドルゾーンでボールを保持したシーンだったため、三笘の前にはエクアドルの右ウイングのアンヘル・メナ(15番)とその背後に右SBバイロン・カステージョ(6番)が構えたシチュエーションに限られていた。

 さすがに相手2人がセットした状態で構えていれば、三笘のドリブルをもってしても、勝機は少ない。その際、パスコースを増やすべく、長友が三笘の内側にポジションをとっていたものの、メナやカステージョを動かすような立ち位置にはなっておらず、逆に三笘のドリブルルートを限定。結局、三笘は仕掛けを諦めて、横パスやバックパスで味方に預けるだけに終わっている。

 後半は、67分に退くまで三笘が仕掛けるシーンが2回あった。2分のシーンでは田中が左サイドでフォローしていたことにより、ボールを下げずに済んだ。もうひとつの12分のシーンでは、カウンター発動後のドリブルだったため、カステージョ1人を突破してボックス内に進入し、マイナスのクロスを供給。南野のシュートはゴール左に外れたが、それがこの試合で唯一、三笘の突破力が効果を示したシーンだった。

 確かに後半は、途中出場の上田綺世をターゲットに、辛うじて自陣から敵陣に前進する手段を見つけることができたが、その回数も限られた。縦パスもなく、クロスもなく、三笘個人のドリブル突破も封じられたのだから、日本の攻撃が機能するはずもない。

 ボールを奪ったあとに、どういった方法で敵陣に前進するのか。布陣を変更したのはいいとしても、その具体的な狙いが見えないまま、貴重な2試合を消化してしまった印象は拭えない。さらに言えば、この布陣と運用方法で、グループリーグ突破のために最も重要な試合となる初戦のドイツ戦をいかにして戦うつもりなのか、という疑問も残された。

 少なくとも、攻撃に関してはアドリブが基本で、再現性は低い。選手のアドリブだけに頼って、本当に過去のW杯で最も難しいグループを勝ち上がれるのか。最終テストを終えたいま、攻守両面において、現状のチーム戦術にほとんどポジティブな要素は見当たらない。

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