サッカー日本代表、アメリカ戦はカタールW杯用に4-2-3-1で新戦術運用か。攻守に従来とは違う現象とデータ (3ページ目)

  • 中山 淳●文 Text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

後半はプレスからのボール回収なし

 するとその策はすぐに効果を示し、試合のリズムも変化。日本の前からの攻撃的守備が影を潜めると、日本がミドルゾーンで4-4-2のブロックを形成する時間帯が長くなった。結局、後半に日本が前からのプレスでボールを回収するシーンは、1度もなかった。

 逆に、ビルドアップ時のボールの出口を見つけたアメリカは、前半には1度も見られなかった3バック中央のウォーカー・ジンマーマン(3番)からの縦パスが急増。5分、11分、30分、35分、38分と、後半だけで計5回の縦パスを成功させている。そのほとんどが、2トップの間やダブルボランチの間を通させてしまった、日本としては許してはならない縦パスだった。

 もしドイツのような一撃必殺のチームを相手にこれだけの縦パスを許してしまえば、失点する確率が高くなるのは必至だ。最終的に無失点で終えたのだからよしとするのではなく、対3バックの守備対応も徹底しておく必要があるだろう。

 実は、2019年アジアカップ決勝カタール戦(1-3の敗戦)でも見られたように、この問題は約3年にわたって4-2-3-1を採用し続けるなかで、一向に改善されなかった課題でもある。

 一方、攻撃面は4-2-3-1に布陣変更したことで、どのような効果が表れたのか。

 まず、森保ジャパンの調子を測るバロメーターとも言える敵陣でのくさびの縦パスは、想像以上に少なく、日本ペースの前半も6本(成功5本)のみで、アメリカがリズムを取り戻した後半は、わずか2本(成功1本)に激減している。

 たとえば、後半途中に4-3-3から4-2-3-1に布陣変更した6月のチュニジア戦では、それまで4本しかなかったくさびの縦パスが4本から7本に増加したが、このアメリカ戦では、相手の布陣変更の影響を受けたこともあり、その時とは逆の現象が起きていた。

 こうなると、当然ながら、連動した攻撃を見せるのは難しい。ダイレクトパスを3本以上つないだシーンは1度もなく、鮮やかに見せたパス交換でもダイレクトは2本連続が最多で、森保監督がよく口にする「連動、連係した攻撃」は見られなかった。

 また、この試合のクロス本数も、前半は6本(成功4本)、後半は4本(成功ゼロ)と、4-3-3を採用した試合と、ほとんど変化は見られなかった。とりわけ、前半だけで退いた右SB酒井宏樹は1本のみで、後半から右SBでプレーした冨安は0本。左SBの中山雄太も前後半ともに2本ずつで、ほぼ毎試合でチーム最多のクロス本数を記録してきた右ウイングの伊東も、前後半で1本ずつしかなかった。

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