楢﨑正剛はベルギー戦後、トルシエ監督にこっぴどく怒られた。「ケチョンケチョンに言われた。だけど...」 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

自分たちが歴史を作っていく

「GKとしても役割が多かったんですけど、求められるものははっきりしていました。チーム全体での統一した考え方があったので、個人的にはすごくやりやすかったですね」

 しかし、そのカバーの意識の強さがベルギー戦では逆にマイナスに働いてしまったと、楢﨑は受け止めている。

「カバーを意識するあまり、セービングすることや、止めるということに関して遅れを取ってしまったというのは、失点した瞬間も感じましたし、終わってからも反省しました」

 試合後のミーティングでも、トルシエ監督にこっぴどく怒られたという。

「よくやった、という雰囲気ではまったくなかったですね(笑)。でも、自分のなかではワールドカップの舞台に立って喜んでいる場合じゃないという意識がより強くなったので、ケチョンケチョンに言われましたけど、逆にあそこで怒られてよかったなと思います」

 その叱咤の影響か、楢﨑は続くロシア戦で完封勝利を演じると、続くチュニジア戦も無失点。日本の初勝利、初のグループステージ突破に多大なる貢献を果たした。

「自分たちが歴史を作っていく、という想いで戦っていました。勝ち点を取ることもそうだし、勝利して、最低でも決勝トーナメントに行くこと。それを目標にしていたので、達成できた時の喜びはすごく大きかったです。

 ワールドカップで勝つというのはこういうことなのかと、日本のファンとスタジアム全体で分かち合えたこともうれしかったですね。日本中の期待感がプレッシャーにもなっていたのは事実ですが、重圧を跳ね返せたという意味も含めて、達成感はありました」

 あの時、たしかに日本には勢いがあった。自国開催の雰囲気も、代表戦士を後押ししていた。

 しかし、終焉は突如、訪れる。ベスト8進出をかけた決勝トーナメント1回戦、雨の宮城スタジアムで日本はいいところなく、トルコに0−1で敗れた。

「単純に消化不良ですね。もっと上に行けると思っていましたから。試合中ももどかしさを感じていましたし、韓国が勝ち進んでいたのもあって、終わってからもモヤモヤとした感覚はありました。悔しいというよりも、納得がいかない終わり方でした」

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