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サッカー日本代表が必要以上に悪く見えてしまった理由。貴重なテストの場とならなかった (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

ベストメンバーに戻ってしまった

 思い返せば、東京五輪の戦い方を見てもそれは明らかだった。2019年に行なわれたアジアカップしかり。3戦目のウズベキスタン戦には、スタメンをほぼ総取っ替えして臨んでいる。結果は勝利に終わったが、この段階で森保監督の監督としてのレベルは見えていた。

 2018年ロシアW杯を戦った西野朗監督も、1戦目(コロンビア戦)、2戦目(セネガル戦)と同じ先発メンバーで戦い、3戦目(ポーランド戦)で総取っ替えするようなやり方をした。幸いにも苦境を乗りきったが、結果オーライの産物以外の何ものでもなかった。

 森保監督はその時、日本ベンチにいた。前任者から模範的な交代方法を学ぶことができなかった。現在のJリーグにも、川崎フロンターレの鬼木達監督をはじめ、この点で合格点を出せる日本人監督は何人かいる。それだけに森保監督の欠点は目立つ。

 森保監督は後半の頭からインサイドハーフで先発した旗手怜央を下げ、伊東純也を投入した。旗手にダメ出しをするような交代劇に見えた。

 柴崎岳、久保建英、原口元気に代え、守田英正、田中碧、南野拓実を投入した後半16分の交代も、同様な印象を抱かせた。このやり方では代えられた選手は自信をなくすばかりだ。層は厚くならない。ベスト8への道を険しくしているのは、監督采配そのものだと言いたくなる。

 この段階で、日本はベストメンバーに戻ってしまった。すると今度は再びメンバーを代えられなくなった。交代枠を余したまま1-1で引き分けるという采配を、埼玉スタジアムに集まった4万4600人の観衆に披露した。格下のベトナムに対して、まさかの引き分け劇を演じた。ブーイングが湧かなかったスタンド風景にも疑問をつけたくなるが、日本サッカー史におけるこれは汚点と言うべきだろう。

 本番まで半年。この状況下ではテストマッチは満足に組めないだろう。貴重な1試合をムダにしたというのが、試合後に抱いた実感だ。

 日本のレベルが高くないこと、世界レベルに到達していないことが露呈した一戦。これでW杯出場を喜べと言われても、素直に頷くことはできない。主因は選手というより監督にある。筆者がサッカー協会の会長、技術委員長なら、新監督を探そうとするだろう。

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