三笘薫の活躍は森保一監督の采配的中と呼べるものなのか。W杯へ向けた日本代表の課題 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

なぜ1トップを浅野にしたのか

「奪われるならサイドで」は、なぜサイド攻撃を行なうかの大きな理由のひとつでもあるが、攻撃の幅に欠ける日本は、攻守が瞬時に裏返しの関係になりやすい状態にあった。選手の攻守の切りかえが悪かったのではなく、構造的な問題がそうさせていた。

 前半、1回攻めたら1回守ることになりがちだった理由だ。攻めた分だけ、オーストラリアに反撃を許した。慌てることになった。前半のなかば以降は、撃った分だけ撃ち返されるシーンが多くなった。

「オーストラリアが後半落ちるのはわかっていた」とは、吉田麻也主将の試合後の談話だが、前半、オーストラリアに2、3度あった惜しい機会に得点が入っていたら、それは甘い解釈と言われかねない。

 森保監督は、なぜ伊東と同じタイプの浅野を真ん中で使ったのか。2人を並べるように配置したのか。南野をどうしても使いたいのなら、南野を0トップ気味に真ん中に据え、スピード系の2人を、両ウイングとして左右に振り分けるべきではなかったのか。

 攻撃に絶対的な幅が足りない。これは大迫が出場している場合も、南野を名ばかりの左ウイングとして起用し続ける限り解消されない、常態化した問題だ。さらに、左サイドバック(SB)長友佑都の攻撃力は弱い。

 先制点が決まった後半44分。右SB山根視来が、守田英正のショートパスをまじえたコンビネーションでゴールライン際を突き、そこからのマイナスの折り返しで三笘のゴールが生まれたわけだが、長友絡みでは、こうしたチャンスは構築できそうもない。

 この左右不均等を解消する切り札が三笘になる。後半の追加タイムに三笘が魅せたウイングプレーは、南野にはまず期待できない切れ味鋭いアクションだった。

 三笘が代表級のウインガーであることは、川崎フロンターレに入団した2020年シーズン、すでに明らかになっていた。ところが森保監督の反応は鈍かった。三笘が五輪代表チームに復帰したのは2021年に延期された東京五輪の間際。本大会でも、アタッカー陣のなかで最も少ない時間しか、出場機会が与えられなかった。

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