伊東純也のスピードは「数を無効化」する威力。森保ジャパンは右サイドが生命線 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

 ここで生きたのは、やはりそのスピードだ。相手DFよりも後方でスタートを切りながらも、エリア内に到達した時点では、すでにDFの前に身体を滑り込ませていたのだ。

 幻のゴールシーンでも、こぼれ球にいち早く反応し、ボールを持てばドリブルでぐんぐんと加速。相手の守備陣形が整わないうちに、中に切れ込み豪快に右足を振った。

 パスワークや連動性だけにこだわっていれば、日本は最後まで人海戦術を敷くベトナムの守備網を崩せなかったかもしれない。数を無効化する伊東のスピードこそが、日本の勝利には不可欠だったのだ。

 ゴールシーンだけではない。ワイドに張って深い位置まで切れ込み、鋭いクロスで好機を生み出せば、同サイドの山根視来(川崎フロンターレ)と良好な関係を築き、ラインの裏で山根からの斜めのパスを引き出すバリエーションも示した。

「視来がフリーで受けても相手のプレッシャーがいかなかったので、5バックの間くらいに立って、そこからシンプルに裏に抜けることを意識しました。その動きで、何回かいい形ができた」

 単独だけではなく、連動性も駆使しながらベトナムの5バックにほころびを生み出していく。中山雄太(ズヴォレ)と浅野拓磨(ボーフム)のセット起用で左が活性されるまでは、伊東を軸とした右サイドが日本の生命線となっていたのだ。

 大迫勇也(ヴィッセル神戸)、南野の前線のふたりだけでなく、田中碧(デュッセルドルフ)、守田英正(サンタクララ)とインサイドハーフのふたりも途中で交代するなか、伊東は最後までピッチに立ち続けていた。攻撃の役割を担う選手としては、唯一交代させられなかったのだ。

 伊東はオーストラリア戦でも勝利の瞬間をピッチで迎えており、2試合連続のフル出場である。攻撃に奔走しながらも、守備での貢献度も高いから、指揮官の頭には交代の選択肢は生まれない。つまり、今の伊東は代えの利かない存在になりつつあるのだ。

 今回の最終予選では、出場停止だったサウジアラビア戦を除いて4試合に先発し、中国戦で大迫の決勝点をアシスト、そしてこの日の決勝ゴール。伊東がいなければ、さらに日本は窮地に追い込まれていた可能性があった。

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