浦和レッズレディース塩越柚歩が好きだった選手。「実は昔からプレー集とか見たりしてました」 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text & photo by Hayakusa Noriko

──そうした浦和での取り組みがなでしこジャパン入りにつながりました。高倉麻子監督(東京五輪後に退任)とは2016年のU-20ワールドカップでも一緒に戦っています。当時と比べて今の自分だからできるという実感はありましたか?

「U-20のときは本職じゃないサイドバックで呼ばれていて、あまり試合に絡めませんでした。今回は本来のポジション(MF)での評価だったので嬉しかったです。ただ周りのレベルも上がっていますから、自信はありませんでした。それでも毎回代表に呼んでもらって、求められるプレーを感じられるようになっていくうちに自分はもっとやれるんだって思ったんですよね」

──いろいろポジションを試されていましたけど、自分のなかでしっくりきたのはオリンピックに入ってからでしょうか?

「そうなんです。オリンピックを目指しながらも、今まで世界大会を経験した選手たちのなかでほぼ経験のない自分が選ばれるわけないっていう気持ちもどこかにあったんです。でも選ばれて、やっとなでしこジャパンの一員になれたなって。そこから気持ちの変化が出てきました。実際のオリンピックは初めてだったからこそ、相手に対する怖さがなくて、みんなが感じるほどのプレッシャーはありませんでした」

──これまでになく伸び伸びとプレーしていたように見えました。納得できるプレーはできましたか?

「結局出場は2試合でしたけど、イギリス戦は守備の部分で上手くハマった手応えがありました。自分の守備から相手のミスを誘ったり、それがいい攻撃につなげられたタイミングが何回かあった。どうしても攻撃で目立ちたいっていうのはありましたけど、イギリスが相手だと攻撃は上手くさせてもらえないので守備で頑張ろうって自分のなかでシフトチェンジしたんです。自分だけの守備の力ではなく、周りからの声かけとかで「ここ行ける!」っていう感覚がオリンピックで一番印象に残ってます」

──対戦相手で「すごい!」と感じた選手はいましたか?

「イギリスの左サイドハーフのローレン・ヘンプ選手です。とにかく足が速くて強くて。事前のスカウティングでも場合によってはファウルをしてでも止めたほうがいいという話でしたが......ファウルすらさせてもらえないんですよ(苦笑)。全然追いつかないし、ふたりで囲んでも倒れない選手でした」

──チーム内で一緒にプレーしたからこそ感じた「すごい!」選手は?

「やっぱりブチさん(岩渕真奈)。(熊谷)紗希さんもそうですけど、ずっと世界と戦ってきて、今も海外でプレーしているし、W杯優勝を経験しているからこそのメンタリティーもすごかった。初戦の前にブチさんが『この大会が人生で一番頑張る大会にしたい』って言っていたのがすごく心に響きました。ここに賭けてるものが、自分が思う以上に大きいものなんだなって感じました。イギリス戦ではブチさんがケガでスタメンでは出られなくて、イングランドでプレーしてるからこそ試合に思い入れもあったはず。ブチさんのためにもっと自分はやらなきゃ!って試合に臨んだんです。交代してからブチさんが『今日ホントよかったよ~!!』って声をかけてくれたのがすごく嬉しかったです」

──日本はクレバーさもさらに必要になってきますよね。

「必要ですね。個人的にクレバーさで目が行くのは(長谷川)唯さんです。攻撃のオプションもたくさんあるんですけど、それ以上に唯さんってすごく守備が上手で、体が大きくなくても(157cm)、賢さがある。実は昔から唯さんのプレーが好きで動画でプレー集とか見たりしていました(笑)」

──塩越選手から「これが出たら長谷川選手の影響だ」というプレーは?

「ロングシュート! 唯さん、GKを見て蹴り分けるんですよ。もちろんそこには技術が必要だけど今までの自分じゃない、あまりやったことはないプレーなので意識して見ています。コツがあるんでしょうね、あの身体の小ささであの飛距離って......オリンピックの時に聞けばよかった(笑)」

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