広島・佐々木翔が思い描く日本代表の左SB像。長友佑都と「同じではなく、自分のよさを出したい」 (4ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Getty Images

 9月からはW杯最終予選という日本代表にとって大事な戦いが始まる。

 佐々木は、森保監督率いる日本代表で常に招集され、欠かせない戦力になっているが、起用されているポジションは本職のセンターバックではなく、左サイドバックだ。日本代表ゆえに本職ではないところでの起用にも監督の要求に応えていかなければいけないが、違うポジションでのプレーがその選手の評価となり、それで代表を外されることもある。そうなるとやり切れない気持ちになるが、本職ではないポジションの選手は、そういうジレンマとも戦わなくてはならない。

「難しいところですね。やっぱり自分が一番輝く場所はどこだって言われたら3バックの左のポジションだと思うんです。そこで日本のために貢献したいという思いが強いんですけど、今の代表は4バックですし、センターバックは鉄板の選手がいますからね。なかなかチャンスがないですけど、やっぱり代表は特別な場所ですし、目指さないといけないところなので難しさを感じつつ、自分のよさをどう発揮しようかもがいています」

 日本代表の左サイドバックといえば長友だ。

 2010年の南アフリカW杯から代表のポジションをキープし、もう10年以上経つ。今年、35歳になり、来年のカタールW杯の時は36歳になる。最終予選やW杯などでハードな試合を連戦でこなせるかというと過去のW杯ほどのパフォーマンスを発揮するのは難しい。それゆえに誰が左サイドバックを担うのか注目されており、佐々木はその候補のひとりだ。

「長友選手は、長い間、代表の左サイドバックを務めてきて、左サイドバックはこういうものだというのを作ってきました。でも、僕は同じことをするのではなく、自分のサイドバック像を見せていかないといけないと思っています。それは前の選手のよさを活かすためにポジショニングを考えてプレーし、いい攻撃ができるように味方をフォローしたり、守備の多くを担って攻撃の選手の負担を軽くして助けてあげることです。あとは高さですね。サイドバックにセンターバックができる選手がいることでセンターバックが苦しい時に助けることができる。そういう自分のよさを出して勝負していきたい」

 最終予選、日本はB組で、オーストラリア、サウジアラビア、中国、オマーン、ベトナムと同組になっている。2位までのチームがW杯出場となり、3位はA組の3位とアジアプレーオフを戦い、勝者が大陸間プレーオフを戦い、勝ったチームがW杯への出場権を掴むことになる。

 佐々木は、初めて最終予選を戦うことになるが、過去の印象はほとんどないと言う。

「正直、最終予選はあまり見ていなかったです(苦笑)。自分が代表に入る前は、もう別世界のことで、単純にがんばってくれよって感じで応援していただけなので。今回は、初めての経験なので、楽しみですけど、不安もありますね。国を背負って戦うのは、やはりプレッシャーもかかるし、1試合の重みも違うと思うので」

 最終予選の初戦は9月2日、オマーン戦、日本のホームで始まる。

「今は、まだその試合のことは考えていないです。その前に僕は、Jリーグでいいプレーをしないと話にならない。地に足をつけてじゃないですけど、チームでいいパフォーマンスをして結果を出すことにまず集中したい。そこで代表に選ばれたら次は代表に集中する。僕は1回にいろんなことができないので、目の前にある仕事を一つひとつやるだけです」

 コツコツと努力する堅実な性格で、与えられた仕事は丁寧に確実にやり遂げる。森保監督が佐々木を信頼しているのは、そういうところが大きい。厳しいレギュラー争いが続くが、指揮官の信頼を背に勝ち残っていければ夢だった代表入りを実現したようにW杯の舞台に立つ夢もきっと叶うはずだ。

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