日本がニュージーランドに苦戦した原因。展開力に大きな問題を抱えていた (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

 だが、南アフリカ戦に続いて、この日もそれが徹底できなかった。サイド攻撃を意図的にすることはできなかった。攻撃は、久保、堂安の感覚を最優先にする、出たとこ勝負の即興的なプレーに委ねられていた。決まれば鮮やかだが、簡単には決まらない難易度の高いプレーである。

 延長戦に入って左ウイングに三笘薫という交代の切り札を投入しても、彼のドリブル力を意図的に活かそうという狙いは、共有されていなかった。コンビネーションプレーは発揮されず終い。単独プレーに偏ることになった。

 選手交代も5人止まりだった。枠(延長は6人)をフルに使わないままPK戦に突入した。交代の遅さも気になった。90分間で代えた選手はわずか2人。延長戦を日本側から希望するかのような采配だった。

 準決勝のスペイン戦は8月3日。コートジボワールと対戦したそのスペインも、延長戦に及んでいた。日本がニュージーランドに90分で決着をつけることができれば、格上スペインに対してコンディション的に優位に戦うことができた。だが、森保監督は、延長戦突入を望むかのような采配をした。

 森保采配に決定的に欠けているのは、出場時間を分け合う概念だ。目標を金メダルに掲げながら、6試合目(決勝戦)から逆算して考えることができていない。

 主力の吉田、遠藤、田中、久保、堂安は、フィジカル的に限界に近づいている。そうした状態で大一番を迎えることになった。格上に対しあと2勝し、金メダル獲得を目論もうとすれば、問われるのはチームとしての余力だ。

 それは監督の力とも多大な関係がある。ニュージーランド戦でエネルギーの使い方を間違えながら、辛くも勝利した森保監督は、次のスペイン戦に、どんなメンバーで臨むつもりなのか。番狂わせが期待できそうなフィジカルとモチベーションの高い11人を、スタメンに並べることができるのか。雲行きは怪しくなっている。

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