日本がメキシコに完勝した理由。メダルへの課題はボール支配率と選手交代 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

 4-2-3-1の「3」の左。相馬が務めたこのポジションは、初戦の南アフリカ戦では三好康児が先発していた。森保一監督がメキシコ戦に向け、唯一スタメンをいじった場所でもある。もし相馬ではなく、三好だったらこのPKはゲットできていなかったかもしれない。

 縦への推進力、直進性という点で、相馬と三好の間には大きな差がある。中盤的なプレーを好む三好ならば、縦勝負を挑んでいなかったのではないか。この2点目は、まさに森保采配が奏功した格好だった。

 メキシコはこれで完全に歯車が狂った。プレーに力が入りすぎ、自慢のパス回しに軽やかさが生まれない。日本のボールを奪う動きがよかったこともそれに輪をかけた。そうした意味では、日本ペースで進んだと言えるが、同時に日本の問題点も露呈することになった。

 遠藤を中心にボールを奪うまではいいが、そこから先に問題があった。つなげない。回せない。よってボール支配率は上昇せず、前半を終了して42%対58%。メキシコに遅れをとることになった。

 メキシコ戦の後半23分、日本は田中碧が前方を走る堂安に縦パスを送る。抜け出せばGKと1対1になりそうな瞬間、堂安が転倒。主審はそのマーカーであるDFホアン・バスケスのプレーを決定機の阻止と判定。一発レッドに処したのだった。

 2-0でしかも相手は10人。日本の敗戦はまず考えにくい、これ以上は望めない余裕のある展開になった。ここで注目ポイントとして浮上したのは2つの点になる。

 まず選手交代だ。この時点で交代カードを切っていたのは、相馬に代えて前田大然を投入した後半20分の1度だけ。交代5人枠をどう使い切るか注目された。

 準決勝以降へ進出するためには、つまり、メダル獲得を目論むなら、これから体力的にきつくなる。中2日で4試合(決勝戦のみ中3日)を戦う強行軍では、消耗戦が予想される。監督には、選手の出場時間を平均化させることが求められている。

 出ずっぱりの選手を減らし、使える選手を増やす。戦力が増えれば、プラスアルファの力、高揚感がチームに芽生える。というわけで、森保監督の選手交代術に注目が集まった。

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