「日本サッカーは確実に進歩している」。かつてイングランド代表戦で贈られた日本代表への賛辞 (2ページ目)
試合開始から日本は、その勢いに腰が引けてしまった。クリアがその場しのぎの逃げにしかならない。慌てて蹴り返すだけで波状攻撃を食らい、混乱からファウルを犯し、セットプレーがそのつど、ピンチになる。失点は時間の問題だった。
前半22分の失点は当然の結果だろう。坪井慶介のクリアが相手に渡って、それを受けたジェラードがミドルレンジから思い切り右足を振り、GK楢崎正剛は正面のシュートを前にこぼす。小さなミスの連続を、オーウェンが逃すはずはなかった。
「我々がテンポよくパスを回している間、日本の選手たちは尻込みする場面も見られた。日本は中盤でパスをつなげることができなかった。何人かの選手は、その場の雰囲気に飲まれてしまったのかもしれない。自分たちは、そこにつけ込むことができた」
当時のイングランド代表監督スベン・ゴラン・エリクソンは、前半30分までの展開をそう振り返っている。
日本は各ラインが間延びし、機能的な動きができなかった。選手同士の距離感が悪く、押し込まれた。心理的な劣等感も多分に影響していただろう。
しかし、イングランドの猛威が少し収まったこともあってか、中盤の中村俊輔、小野伸二がボールを持てるようになると、戦局を五分に戻していった。そのボール技術や創造性は、イングランドの猛者たちを相手にしても十分に通じた。
「試合序盤はリズムをつかめずに苦しんでいたが、ペースを取り戻すと、挑みかかるような強さがあった。2002年ワールドカップの日本は、非常に統制が取れていて、各自が役割をこなす感じだったが、戦術に忠実すぎて、自由な発想や創造性が乏しかった。今日対戦したチームは、ずっと攻撃的だった」
当時、イングランドの主将だったガリー・ネビルのコメントは興味深い。
そして後半8分だった。日本は敵陣でプレーする時間が長くなり、中村が三都主アレッサンドロに鮮やかなスルーパスを送る。冷静な折り返しを、エリア内で待っていた小野が右足で流し込んだ。
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