東京五輪最終選考試合で久保建英が見せた真骨頂。後半の采配に感じた違和感 (3ページ目)
最終ラインは暇そうだった。特に、酒井、吉田麻也(サンプドリア)のオーバーエイジコンビは、楽にプレーしていた。守備的MFを務めたもうひとりの助っ人、遠藤しかり。その一方で、サイドを1人でカバーすることになったウイングバックと、枚数を減らされたアタッカー陣には厳しい設定になった。攻撃的ないいプレーができる環境ではなくなった。
食野亮太郎(リオ・アベ)、三好康児(ロイヤル・アントワープ)、橋岡大樹、相馬勇紀は、監督が採用した守備的サッカーのために、活躍の機会を失った。最終選考試合であるにもかかわらず、だ。攻撃的か守備的か、陣容が違う状態でプレーさせたという意味では、フェアとは言えない采配である。
東京五輪を目指すチームとして立ち上げてから、森保一、横内昭展両氏は、ここまで80人近くの選手を招集。文字通り、振るいにかけてきた。コロナ禍の猛威が吹き荒れる中で。五輪本番18人のメンバーの中にはオーバーエイジが3人含まれるので、当選者はわずか15人にすぎない。それが監督の仕事とはいえ、当選率2割以下という現実は、圧倒的な買い手市場だ。
そうした中で「選手をリスペクトしていない」と言われかねない采配を、横内監督はその最後に行なった。ジャマイカをフランスやメキシコに見立て、後ろを固める作戦に出た。同じ条件で競わせないと、落選する選手に対して申し訳がたたないのではないかとは、現場で抱いた素直な感想だ。
強者相手に、しかも実際には弱者であるジャマイカに対し、リードしたら守りを固めるという作戦そのものも、安易であるし、なにより古典的だ。五輪で実際に采配を振るのは森保氏なのかもしれないが、8割の候補者を落選させた監督に向ける目は、もっと厳しくなければバランスは取れない。これは森保氏が唱えてきた「金メダルを狙う」に相応しい采配なのかという視点が、不足している気がしてならないのだ。
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