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14点奪うより大切なこと。5-0にしないと挑戦できなかった日本代表

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 前半を終了して5-0。後半打ち止めにするか。10点取ってしまうのか。ハーフタイムの関心は、そこに集まっていた。

 30日、フクダ電子アリーナで行なわれたモンゴル戦(W杯アジア2次予選)は、終わってみれば 14-0。クリンチで逃げるのが精一杯の、戦意を喪失したモンゴルに対し、日本は容赦なく最後まで殴りかかった。

 日本の勝利自体は喜ばしいことではある。ただ、欧州では(南米でもそうだろうが)、10点以上奪うのはマナー違反。得失点差が絡んだ試合でない限り、5点ぐらいで打ち止めにしようとする風土がある。

 フランスがそうだった。2001年3月。スタッド・ドゥ・フランスで行なわれたフランス対日本の親善試合。日本が0-5で大敗した試合だ。その後半なかばだった。ロベール・ピレスがタッチライン際でボールを受け、前進しようとした瞬間、背後のベンチから声が飛んだ。

「もう止めておけ」

 フランスは日本の息の根を止めることを避けようとした。相手を完全に殴り倒すことは、スポーツの親善外交上、好ましくない振る舞い。礼儀知らずの作法になる。

 一方、ドイツは2002年日韓共催W杯で、サウジアラビアに8-0の勝利を収めた。欧州各国はその行きすぎた行為に対して、非難を浴びせたものだ。しかしドイツは懲りることなく2014年ブラジルW杯で、再びマナー違反を冒す。準決勝でブラジルに7-1の勝利を飾る。開催国を奈落の底に突き落とす礼儀知らずの大勝劇を演じた。その夜、ブラジル全土に放送された現地のスポーツニュースは、ドイツの攻撃を、空爆の被害を受ける実際の戦争映像と重ね合わせる自虐的とも言うべき手法で、大敗を悼もうとした。

 モンゴルをコテンパンにやっつけてしまった日本を褒める気はしない。日本が欧州大陸の一国だったら、糾弾されていたに違いない。モンゴルのサッカー界が、ショックでしばらく寝込んでしまう可能性を、否定することはできないからだ。

モンゴル戦は前半のうちに5-0とし、勝負を決めた日本代表モンゴル戦は前半のうちに5-0とし、勝負を決めた日本代表 日本は最後の最後まで、あまりにも大真面目に戦った。そして、現場に漂うこのいきすぎた真面目さが、逆に、強化の足枷にもなっている気がしてならないのだ。

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