日本が悩むストライカー育成。ウルグアイから学ぶべきことは何か? (4ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

 松原氏が、カバーニにインタビューした時のこと。彼はピッチに立ったらまずは想像すると語ったそうだ。

「彼はボールの流れを想像して、どこにボールが来るのかがわかると言うんですね。一度想像すると、それを頭の中で把握し、自動的に次に何が起こるのかを察知して体が動くのだそうです。一つのポジションから、どうやってゴールを奪うのに適したポジションに辿り着くのか。これを想像するのがストライカーには必要なのだと」

 加えて、基本的な部分でコンディショニングも大変重要だという。

「チャンピオンズリーグなどに出場するようなビッグクラブにいると、タイトル獲得は使命ですが、週末にリーグを戦ったら、中2日や3日でウクライナやロシアに飛んで試合をする場合もあり、タイトなスケジュールになる。そのなかでしっかりとパフォーマンスを出すために、コンディショニングが重要だと言います。チームを勝たせるためにいちばん重要なポジションにいるのがストライカーなので、とくに気を使うんです」

<本当の世界基準をつくる大切さ>

 ウルグアイの選手を語る時に、彼らにとって大事なメンタリティがある。それはウルグアイ代表の愛称の一つである「ロス・チャルーアス」に関係している。

「彼らはよく『俺たちにはチャルーアの力があるんだ』と言うんです。チャルーアとはウルグアイの先住民。昔、ポルトガル(ブラジル側)やスペイン(アルゼンチン側)の侵攻を受けて、チャルーアはそれに屈せずに戦い続けた歴史的な背景があります。

 だから、ウルグアイ人は絶対に降参しない。俺たちにはチャルーアの血が流れ、その力があるんだと。ウルグアイのサッカーがなぜ強いのかを聞くと、みんなそういうことを話すんです。怯えているのは俺たちじゃない、ブラジルやアルゼンチンなんだと」

 そうした彼らの強いメンタリティは、プレー面にも大きく影響しているのだ。

「スアレスやカバーニは負けん気が人一倍強くて、前線からしつこく相手を追い回しますよ。DFのディエゴ・ゴディン(カリアリ)やホセ・ヒメネス(アトレティコ・マドリード)も、どこまでも食らいついて1対1は強く、ヘディングでもバチンと跳ね返す力強さがありますよね。そうした歴史的なバックボーンから来る、戦うメンタリティがウルグアイの強さを支えているんです」

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