「トルシエvs選手」という対立があっても、日本代表が強くなれたわけ (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・構成 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 ときにトルシエがやりすぎだと思えば、選手に同調してなだめ、ときに選手に誤解があれば、監督の真意を伝え、山本が選手と監督の間に立つことで、チームは円滑に前進した。

 U-20代表時代には"山本監督"の下でプレーし、長く山本を見てきた明神智和が語る。

「昌邦さんじゃなきゃできなかったし、うまくいかなかったっていうくらい、大事な役割だったと思います。例えば、選手が監督とは違う思いを持っていたとして、どちらかの思いを一方的に伝えるだけでは信頼が失われるし、監督と選手の間に溝ができてしまう。そこをうまく監督の要求も聞きながら、選手の不満も受け入れながら、締めるところは締めるし、緩めるところは緩めるっていう、その一番いいバランスを取っていた。そこは、相当苦労されたと思いますけど、選手からしたら、非常にありがたかったです」

 山本は「文句を言わない」と話していたシドニー世代にしても、明神は「言っていたと思いますよ」と笑う。

「『なんだよ、あれ』とか。『もう、わけわかんねぇよ』とか(苦笑)。でも、僕らがそんなことを言っていると、昌邦さんが一緒になって、『そうだよな、あれはないよな』って言ってくれることもあれば、『でもな、監督はな』っていうこともあったり。そのさじ加減は、本当に選手一人ひとりを見ていたからこそできたんだと思います」

 日本代表が見せた、圧倒的な強さの秘密である。

(つづく)◆第4回はこちら>>

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