「グラスゴーの奇跡」も起きた。永井謙佑が語るロンドン五輪の真実 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kihsiku Torao

「南アフリカW杯の雰囲気を味わえていたのは大きかったですね。周りには期待が高くないチームでしたが、直前に戦い方を変えて結果を出した。ロンドンの時のチームはもっと期待されていない感じでしたけれど、南アフリカにかぶる部分がありました。大会前に戦い方を変えて、『見とけよ!』という思いで、みんなが一つになれたのが大きかったです」

 南アフリカW杯とロンドン五輪のチームの共通点は、大会前に戦い方を大きく修正したことだ。ロンドン五輪の時は、大会前の練習試合ベラルーシ戦までは4-4-2のポゼッションスタイルをとっていたが、最後の練習試合であるメキシコ戦から4-2-3-1と永井の1トップに変更。カウンター攻撃を軸にし、守備の細かい約束事を決めた。

「1トップは、攻撃も守備も全部やらないといけないので、めちゃくちゃ走ります。五輪代表では(1トップを)半年以上やっていなかったですし、クラブ(当時は名古屋グランパスに所属)でもやっていなかったので、正直、体力が持つかなという不安がありました。ただそのなかで、変化としていちばん大きかったのは、守備のやり方が機能したことだと思います」

 メキシコ戦で、守備はどう変わったのか。

「最初は縦のパスコースだけ切って、背後にボールを蹴られないようにする守りでした。でもオーバーエイジ枠で吉田麻也選手が入って、自分がまず守備に動いて相手の縦に蹴るコースを限定して、ボールの取りどころをハッキリさせました。それで、みんなが連動して前からボールを追えるようになり、奪ったら速く攻めるカウンターを確立することができた。すごくイメージがよかったので自信になったし、そこからイケるなって思いました」

 大胆な戦術変更に加え、選手たちはグラスゴーで行なわれる初戦のスペイン戦に向けて、コンディションを100%にすべく調整していた。グループリーグから決勝まで徐々に上げていくのではなく、一戦必勝で初戦からフルスロットルで戦うと決めていたのだ。

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