強化はこれでいいのか?森保ジャパンが抱えている根本的な問題 (4ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 いずれにしても、前半の日本はほぼ完敗だった。前半に記録したクロスボールは3本のみで、前線3人への縦パスは失敗も含めてわずか3本。当然、有効なサイド攻撃も、3-4-2-1の特性を生かした連動した攻撃もつくれなかった。

 そこでクローズアップされるのが、森保監督の後半の選手交代策だ。劣勢が続いた前半の流れを変えるべく、最初に森保監督が切ったカードは相馬勇紀。3-4-2-1のまま、遠藤渓太に代えて左ウイングバックに投入した。

「戦いのなかで、3バックも4バックもできるようにシミュレーションしている」

 メンバー発表会見でそう語ったのは、森保監督だったはず。しかし、反撃しなくてはいけない試合展開にもかかわらず、監督自らの采配で勝負に出ることはなかった。あくまでも3-4-2-1で選手をテストしながら、システムの成熟度を上げる作業を優先した格好だ。

 ここで、シャドーの森島を下げて仲川輝人を投入し、4-2-3-1にシフトする采配は逆転を狙うには有効だったと思われる。右ウイングに仲川、左に遠藤、中央は上田と鈴木が縦関係を作る。ボランチは井手口と田中碧、4バックは右から橋岡、三浦、畠中、佐々木を並べれば、相手は守備方法を変えざるを得ない。

 さらに攻撃のアクセルを踏む場合、ボランチの井手口を大島に代え、前線の上田か鈴木を小川航基か田川亨介に代える策も考えられる。少なくとも、仲川をシャドーで起用するよりも、圧倒的に攻撃的に戦えるはずだ。

 にもかかわらず、森保監督はその選択をしなかった。要するに、後半に見せた森保監督のベンチワークは、勝利の追求よりも「U-22代表の強化に重きを置いた采配だった」ととらえることができる。

 その結果、後半の日本は試合の流れを大きく変えることができないまま、相手のプレスが弱まったにもかかわらずシュートまで持ち込む形をつくれずに終わっている。敵陣でボールを保持する時間が増えたにもかかわらず、日本の攻撃にポジティブな印象が残らなかった理由だ。

 ちなみに、後半の日本が3トップに入れた縦パスは失敗も含めて8本に増え、クロスボールも15本に増加。しかし、左に入った相馬は計7本を記録するも、そのうち味方につながったクロスは鈴木がミストラップした49分の1本のみ。大外で1対1を仕掛けるプレーは評価すべきだが、相手がわかりきった状況で入れるクロスは不発に終わった。

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