香港戦大勝に隠された森保Jの問題。なぜ攻撃は「右」に偏ったのか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 菅自身にも理由はあった。1対1で相手に仕掛ける菅と相馬、両者の姿を比較すれば、どちらに縦突破の期待が抱けそうかは明白だった。相馬にある技のキレ味が、菅には不足している。そうした情報が時間の経過とともに選手間で以心伝心したと考える。菅にパスを出しても進展は見込めそうもない。そう考える選手が多かった。これも左サイドの菅にパスが回らなかった理由だろう。

 相馬の魅力が一瞬のキレだとすれば、菅の魅力はピッチの縦幅105mを1人でカバーする馬力というか、アスリート的な能力だ。ところが香港にはサイドを突く力がないので、菅の縦幅を往復する力は無用になっていた。3-4-2-1のWBとしての適性は、相馬ではなく菅の方が上だ。相馬はサイドアタッカーが両サイドに各2人いるサッカー(主に4バック)の方が本来、合っている選手だ。しかしこの試合では、菅の方がよさを発揮できなかった。試合展開と森保式3バックがマッチしていなかったというべきだろう。

 日本と香港のボール支配率の関係を推定すれば70対30。それ以上開いていたかもしれない。しかし、日本は最終ラインにほぼ常時、3人いた。3バックが引いて構えていた。試合展開を考えれば、2人でも多いくらいなのに、3人もいた。非効率なサッカーを展開したにもかかわらず5-0で大勝した。香港の弱さは目に余るものがあった。

 右の相馬にしても、サイド攻撃を再三、仕掛けていたわけではない。サイドアタッカーが2人いるサッカーに比べ、サイドにボール送られる回数は少なかった。攻撃は真ん中方向に進みがちだった。と言うことは、ボールを失う場所も真ん中付近になる。先の中国戦でも同様な傾向は見え隠れしたが、香港は中国より数段弱かったため、真ん中で失ってもその危険性が露呈することはなかった。だが、この傾向は出るところに出れば致命傷になる。相手のレベルが高ければ、それが高い位置(相手のペナルティエリアに近い場所)だったとしても危ない。最終ラインに3人構えていても、だ。

「サイドも中盤に含まれる」とは、これまで話を聞いた欧州の監督がこぞって口にしていた台詞だ。ひるがえって、森保ジャパンの両WBは中盤的ではない。いわば大外で構える槍だ。ウイングや守備的MFと協力しながら上がっていくジワジワ型ではない。ボールがサイドを経由しないでゴール前に向かっていくケースが目立つ、これも大きな理由のひとつだ。

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