稲本潤一が明かす、ドイツW杯と南アフリカW杯は何が違ったのか (4ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

「南アフリカ大会の時よりも、ロシア大会のチームのほうが余裕を持ってベスト16入りを決めた。初戦のコロンビア戦の勝ち方、3戦目のポーランド戦における割り切った戦い方とかを見て、そう思った。決勝トーナメント1回戦のベルギー戦も負けたけど、いい試合をしていた。

 南アフリカ大会から8年かかって、世界といい勝負ができるようになった。それでもベスト8に行けないのは、まだ力が足りないということ。日本は強くなっているけど、他の国も強くなっているんでね」

 南アフリカW杯以降、多くの選手が海外でプレーするようになって、選手個々のレベルは確実に上がっている。一方で、チームはどうか。レベルアップはもちろん、「これが日本のサッカーだ」というスタイルが確立できていないのが現状だ。

 それは「監督選びに問題がある」と、稲本は考えている。4年ごとに監督が代わって、そのつどサッカーのスタイルが変われば、いつまで経っても"日本のサッカー"は確立できないからだ。

 2002年W杯で指揮官を務めたフィリップ・トルシエ監督のほか、結果を出しているのは、奇しくも岡田監督(2010年W杯)、西野監督(2018年W杯)という日本人監督だけ。稲本は、岡田監督のもとでプレーした際、意思疎通のしやすさ、細かなニュアンスを理解できる日本人監督のよさを感じたという。

 ロシアW杯のあと、森保一監督が日本代表を率いることになった。稲本は「日本サッカーの、道標になってほしい」と期待している。

「僕は、これからは(代表の監督は)日本人でいいと思いますよ。外国人監督になると、そのカラーが強く出てしまうし、監督が代わると、また(チーム作りが)イチからになる。まったく違うサッカーになると、選手は対応するのが難しいし、順応するのに時間もかかる。前回のW杯後、日本人のキャラクターを知り、選手の土台を知る日本人が代表監督になったのは、すごくいいことやと思いますね」

 稲本は穏やかな表情で、そう語った。

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