岩渕真奈に手応え。なでしこは
東京五輪に向けて選択の時が来た

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 今年のFIFA女子ワールドカップフランス大会では、ベスト16敗退だったなでしこジャパンが、カナダとの国際親善試合を行ない、4-0の大勝で東京オリンピックに向けて再スタートを切った。

1ゴール1アシストでチームをけん引した岩渕真奈1ゴール1アシストでチームをけん引した岩渕真奈 対戦したカナダは、FIFAランキングで日本の10位を上回る7位に位置し、7月のFIFA女子ワールドカップでは、日本と同じくベスト16という成績で終えている。数字的には互角の相手だった。来日メンバーも24名中21名がフランス大会を経験しているとなれば、そのカナダを相手にゲームを支配し、4ゴール無失点の結果は評価できる。

 開始6分という、早い時間帯での先制点も久しぶりの展開だ。菅澤優衣香(浦和レッズレディース)から、右サイドの中島依美(INAC神戸レオネッサ)へ、一気に前線へ運んだ中島からのスルーパスを相手DFより一瞬早く岩渕真奈(INAC神戸レオネッサ)がダイレクトで決めた。岩渕らしいゴールを本人はこう振り返った。

「優衣香(菅澤)がしっかりとタメを作ってくれたから」

 ふたりのFWは終始駆け回ってプレッシャーをかけ続けると同時に、前線であっても簡単にボールを失わないという決意が球際の粘りに表われていた。

 その後2点目、3点目にも絡む活躍を見せた岩渕。ワールドカップの時と明らかな違いが見えたのはフィニッシュで、わずかながら余裕を感じた。

 要因はふたつある。ひとつはカナダの出来が悪かったこと。W杯の戦況を見れば、日本が立ち上がりの猛攻に脆いことは周知の事実だ。当然、なでしこたちもこの点は十分にケアするつもりだったが、フタを開けてみればカナダが選んだのは5バック。推進力を前面に押し出すこともなくゲームに入ってきた。

 主導権を奪うことが課題だった日本にとってみれば幸いな反面、この展開では、立ち上がりの弱さを克服するための強化にならない。ただ、流れを掴んだ日本にとっては、あらゆるチャレンジに取り組みやすい状況でもあった。

 2つ目の要因は、静岡での約1週間のトレーニングで、高倉麻子監督が選手たちへの戦術の落とし込み方を変えたことだ。カナダ戦のスタメンは早い段階で固定し、細かく戦術を浸透させた。そして攻撃面では縦への展開を念頭に入れ、男子高校生、男子大学生の厳しいプレッシャーとスピードに対峙しながら、奪いどころや攻撃への切り替えについて取り組んできた。あえてメンバーの固定を避けてきた高倉監督が見せた就任以降、初の試みだが連係面では成果を出している。

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