岩渕真奈が一撃に込めた想い。なでしこはD組1位突破を狙う

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 まさに起死回生――。岩渕真奈(INAC神戸レオネッサ)の一振りで、なでしこジャパンが崖っぷちから這い上がった。

 格下と目されていた世界ランク37位のアルゼンチンと、まさかのスコアレスドローというワールドカップ(W杯)フランス大会初戦の結果に、選手たちも落胆を隠せなかった。移動日を挟んで中3日。トレーニングでは、懸命に気持ちを切り替えようとしている選手たちの姿があった。

今大会初のゴールを岩渕真奈(左)が決めると駆け寄って喜びを分かちあった今大会初のゴールを岩渕真奈(左)が決めると駆け寄って喜びを分かちあった 第2戦の相手は、イングランドに初戦で敗れはしたものの、1-2と大健闘を見せたスコットランド。ここで負けるようなことがあれば、日本はグループリーグ敗退の危機に陥る。何より、これまで積み上げてきたものを何ひとつ示すことなくW杯が終わってしまう。そんな危機感を持って、試合前日には選手ミーティングでチームの意識をひとつにまとめるなど、できる準備はすべてして臨んだ一戦だった。

 この日のなでしこたちは、序盤から気迫が違った。一つひとつのプレーからその想いが伝わってくる。そうなれば、早い時間帯に欲しくなるのは先制点だ。スコットランドは、前半こそ日本とがっぷり四つに組むことに挑戦してくるだろうが、それが難しいとなれば、守備的な方向に舵を切ることも十分に考えられた。日本は相手の戦い方が変わってしまう前にゴールをこじ開けなければならない。

 日本は、開始から左サイドバックの鮫島彩(INAC神戸レオネッサ)とサイドハーフに入った遠藤純(日テレ・ベレーザ)が、左サイドから積極的に仕掛けて流れを掴む。そして歓喜の瞬間は23分、出だしから好調だった遠藤のパスを受けた岩渕が豪快に叩き込んだ。しかも、渾身の一撃は痛めていた右足だった。

「久しぶりに右足で(シュートを)打って痛みがなくてよかった」と本人も安堵した様子。シュート練習ではセーブしていた右足を加減することなく振り抜いたのは、岩渕の想いの強さの表われだった。

 前回のW杯カナダ大会も故障を抱えた状態で参加していた岩渕は、苦しみながらグループリーグを戦うチームを見て、焦る気持ちを抑えこんで黙々と調整を続けていた。

「ここまで待ってもらっているんだから、絶対に結果を残したい」

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