本格開花なるか。代表デビューの鈴木武蔵が前線の定位置争いに名乗り (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 迎えたコンロビア戦で先発に名を連ねると、前半10分にはエバートンに所属する195cmのCBジェリー・ミナを背負いながら、しっかりとボールを収めて局面を前に進めた。その1分後には、同世代の中島からのスルーパスに抜け出し、ボールは少し長かったものの両者の呼吸と狙いは一致していた。さらに前半28分には、再び中島の縦パスから南野のスルーを経て鈴木につながったが、ミナに阻まれ、シュートには持ち込めなかった。

 鈴木は序盤から積極的にボールに絡み、自らリズムを生み出していくと、前半37分に最大の見せ場が訪れる。左サイドでボールを持った中島が「カットインしてくるとわかった」背番号13は、「サイドバックなら競り勝てると思って、(背後に)逃げて」クロスを引き出す。フリーでのヘディングは惜しくも失敗に終わってしまったが、この日最も可能性を感じさせたシーンだった。

 コロンビアが修正してきた後半には、存在感が薄くなり、後半20分に香川真司(ベジクタシュ)と交代。鈴木は「後半の反省点は、前線の守備の強度が落ちたこと。あそこでもう一度プレッシャーをかけ直すべきだった」と試合を振り返った。

 昨季は長崎で、元日本代表FWの高木琢也監督(現大宮監督)から「なるべくゴールに近い位置で前を向いてボールを受ける動き」を教わっただけでなく、個別にメンタル面の指導も受けた。今季は札幌でミハイロ・ペトロビッチ監督に「動きすぎずに我慢すること。タイミングと予測が大事」と助言され、成長につなげている。そして代表の森保一監督からは、裏への抜け出し、ポストプレー、クロスへの動き、決定的な仕事を求められている。

 コロンビア戦だけで言えば、前の2つは披露できたが、残りの2つについては本人も満足できていないのではないか。

「たしかにクロスに合わない場面はありました。自分のシュートも少なかったので、決定機にもっと絡んでいきたい。そこは出し手とのすり合わせが必要なので、この合宿でやっていきたいです」

 ミナとダビンソン・サンチェス(トッテナム)というハイレベルなCBとの対戦に関しては、少し嬉しそうにこう話した。

「1キャップ目を刻んだというより、コロンビアと対戦できたことが大きな経験になりました。負けはしたけど、今後の成長に向けて、この貴重な経験を生かしていかないと。(相手のCBは)本当に強かったし、あんな選手とやれたのは大きい。もっともっと成長して、次にやる時は負けずに得点を取りたいです」

 現在の日本代表で、前線の大黒柱と言うべき大迫の存在は大きいが、不測の事態へのオプションは必要だ。いや、鈴木自身はそこで満足するつもりはない。

「翔哉をはじめ、みんなとできる喜びを感じていますが、自分もこの代表で中心になっていきたい」

 本格開花を始めたストライカーは、今後の代表の前線に彩りをもたらすことができるだろうか。

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