2019.03.24

本格開花なるか。代表デビューの鈴木武蔵が
前線の定位置争いに名乗り

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

「正直に言うと、まだ何もできていない。オーケストラに例えるとチューニングしている段階。コパ・アメリカに照準を合わせている」

 試合前日の記者会見で、2月に就任したばかりのコロンビアのカルロス・ケイロス新監督はそう言った。フレンドリーマッチにもかかわらず、遠く南米から詰めかけた多くの自国メディアを牽制しようとしたのかもしれないが、たしかに翌日の試合では、ホームの日本に主導権を握られる時間が長かった。

 それでも、能力の高い選手を揃えるチームと経験豊富な指揮官は、試合中に的確に修正を施し、エースのラダメル・ファルカオのPKできっちりと1-0の白星を手にしている。コロンビアは日本に敗れたロシアW杯の雪辱を果たした。

 ただし、日本に収穫がなかったわけではない。20歳の冨安健洋(シント・トロイデン)は、ワールドクラスのストライカーであるラダメル・ファルカオ(モナコ)に対してPKを除いてあまり仕事をさせず、代表に復帰した中島翔哉(アル・ドゥハイル)は段違いの敏捷性とスキルで多くのチャンスを生み出した。そして大迫勇也(ブレーメン)の代役に抜擢された鈴木武蔵は、代表デビュー戦で決定的な働きこそ見せられなかったが、持ち味を発揮したシーンもあった。

コロンビア戦で代表デビューを果たした鈴木 昨季、V・ファーレン長崎でキャリア初の2桁得点をマークし、オフに移ったコンサドーレ札幌で今季ここまで3ゴール。かねてより将来を嘱望されていた25歳がついに覚醒の時を迎えつつあり、代表の前線の定位置争いを激化させることが期待されている。

 コロンビア戦の前日には、「楽しみです。(監督には)自分の特徴である(相手ディフェンスラインの)背後に抜けることや、クロスに思い切り入るように言われています。あとは前線で起点になること。なるべくペナルティエリアまで行って、決定的な仕事ができるように」と鈴木は話していた。表情からは読み取れなかったが、きっとこの時を楽しみにしていたのだろう。

 その大きな理由のひとつに、現代表は彼と同世代の選手が中心になっていることがある。中島、南野拓実(ザルツブルク)、室屋成(FC東京)、中村航輔(柏レイソル)と、2016年のリオ五輪に共に参加したメンバーだけでも、今回のチームに4人いる。

「外から見ていた時は刺激になりました。10代の頃から一緒にやっている選手もいて、自分も早く(日本代表に)入りたいと思っていました」