イラン戦は森保Jのベストマッチ。スコアとは裏腹な内容を検証した (4ページ目)

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 自分たちが流れをつかんでいる間に一気に勝負を仕掛けるか否か。選手交代によってリズムが変わるケースもあるので、指揮官が悩むのも当然だ。ただ、結果的に10番の投入を躊躇した直後にこの試合を決めることになった問題のシーンがおとずれたことを考えると、イラン側からすれば悔やんでも悔やみきれない采配だったに違いない。

 しかも、56分に生まれた日本の先制ゴールは、イランが普通に対応していれば、ディフェンスの人数も足りていたため、失点につながるようなピンチではなかったはず。にもかかわらず、なぜかボールサイドにいたイランの5人の選手が同時にレフェリーに対して南野のシミュレーションをアピール。プレーを止めてしまったことが、本当の意味でのこの試合の「勝負の分かれ目」となった。

 その隙を逃さなかった南野と、シュートを決めた大迫のプレーは評価すべきだが、少なくとも後半開始約10分間の日本が攻撃の糸口さえ見つけられない状況にあったことを考えると、それは願ってもない幸運なゴールだったことは間違いないだろう。

 さらにその7分後、南野のクロスがスライディングした8番(プーラリガンジ)の手に当たり、それがVAR判定の末にPKが日本に与えられると、67分にそのPKを大迫がきっちり決めたところで、勝負はほぼ決したと言える。自ら墓穴を掘ったとはいえ、このような形で2失点を喫すれば、イランが反撃のエネルギーを取り戻すことは不可能に近い。

 そのシーンも南野のクロスが手に当たらなければシュートに持ち込めたかどうか怪しかったことからしても、イランの「自滅」と言わざるを得ない。実際、これら2つのゴール以外、後半の日本が67分までに相手ゴールに迫ったシーンは存在しなかった。

 ただ、日本が「棚から牡丹餅」で手にした勝機を逃さなかったのも事実で、そこは評価すべき点だ。とりわけ2-0後の日本は縦に急ぐような攻撃はせず、2トップにして前掛かりになったイランに対し、機をうかがって幾度となくカウンターで相手ゴールを脅かした。それが、最終的に原口元気が決めたダメ押しの3点目につながっている。

 ちなみに後半の日本の縦パスは、柴崎が2本で負傷交代の遠藤は1本。センターバックの吉田と冨安は、前方の味方につなげたパスは1本もなかった。もちろん実力者イランがリスクをかけて攻めてきたため、日本のボール支配率は前半の58.3%から後半は45.7%に低下したが、2点リードした日本が時間を使いながらクリアを中心にセーフティファーストを貫いたことが、この数字からも見て取れる。

 このような形で試合を終わらせたことは、この大会で森保ジャパンが成長した部分であり、この試合で得た収穫のひとつと言っていいだろう。

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