ベンチからの視点。宇佐美貴史は「勝ちにいくため」の役割を次こそ... (3ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 しかし、宇佐美にとっては、スタメンを勝ち取れない厳しい時が続く。サブの攻撃的MFとしての序列も、本田に続いて2番目である。ゆえに、コロンビア戦のようにリードして試合を締めくくる状況になると、出番はなくなってしまう。

「それでも、自分に求められているものは、変わっていない。攻撃にどう絡んでいくか、フィニッシュの流れをどう作っていくのか。スタートから(先発)でも、途中からでも、それのみだと思いますし、(自分がすべきことは)それをどれだけ強烈に出せるか、というところだと思います。

(ここまでは)まだ出し切れていない部分があって、これから相手のレベルが上がっていくと、さらに難しくなっていくと思いますが、(日々の)練習のなかで、自分はこういうときにパスがほしいとか、こうなったときにシュートを打つとか、(みんなと)コミュニケーションを取っているし、チームとしての積み上げが1日、1日とある。そうやって、日増しによくなっていくようにやっていくだけですね」

 2012年ロンドン五輪のときも、なかなか出番がなく、悔しい思いをした。ガンバ大阪からドイツの各クラブへ移籍した当初も、そういう難しい時間を長く過ごしてきた。

 そして今、同じポジションの乾貴士が結果を出しているなか、"自分も"という思いは強いはずだ。もっと試合に出て暴れたいに違いない。だが、これまでの経験を経て、そうした気持ちが表に出ることはない。「チームのために」自身の思いは内に秘めて、静かに爆発のときを待っているように感じられる。

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