賞賛ムード、続投決定の今だからこそ、ハリルでいいかを真剣に考える (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 客観的に試合を見ている側からすれば、もっとシンプルに前線の長身選手目がけてロングボールを放り込んだほうが有効だろうに、と思えるほどだった。実際、日本の選手からも「(オーストラリアがつながずに)蹴ってきたほうが怖かった」という声は聞かれた。

 だが、彼らは決してそうはしなかった。お世辞にも器用には見えないGKやDFまでもが、日本のプレスを受け、ミスを連発し、危ういボールの奪われ方を何度犯してもなお、自分たちの目指すスタイルを変えなかった。

 なぜ、オーストラリアは抱える人材に照らしても適しているとは思えないスタイルを、ここまで貫いたのか。

「そういう(パスをつなぐ)サッカーをしたかった。この哲学のなかで解決策を見つけたかった。これを追求していきたい」とは、アンジェ・ポステコグルー監督の弁だが、オーストラリアは過去の経験から、アジアやオセアニアでは高さとパワーで相手をねじ伏せることができても、世界へと一歩足を踏み出せば、それでは通用しないことを身に染みて感じてきたのだろう。

 そんなオーストラリアの姿勢が、この試合に限ったことではないことは、MF長谷部誠の「"もしかしたら"蹴ってくるかもしれないと想定はしていたが、つないでくる可能性が高いと思っていた」というコメントからもよくわかる。昨年メルボルンで対戦したときもそうだったし、さらに言えば、それはナショナルチームだけのことでもない。近年のAFCチャンピオンズリーグを見ていても、オーストラリアのクラブは負けている状況の試合終盤でさえ、まったくと言っていいほど蹴らない。その愚直さは、はたから見ていて、もどかしくなるほどだ。

 こんなことを続けて、万一、W杯出場を逃すようなことにでもなれば、元も子もないようにも思えるが、それでも彼らは信じる道を突き進んでいる。

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