アメリカで「なでしこの自信」が復活。高倉監督&大部コーチの手腕が光る (4ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

「メンバーが変わってできないのであれば、それはできていることにはならない」(高倉監督)

 チーム戦術を理解する力は長(た)けている選手たちでも、それを実行するには個人の戦術レベルが上がらなければならない。今こそ、足元を見直して確実なレベルに上げていく努力が必要だ。

 これらのことを数日でやってのけたのには、高倉監督と参謀役でもある大部由美コーチとのコンビの力がある。育成年代からU-16、17、19、20と各カテゴリーでコンビを組んできた。大部コーチの叱咤の後には必ず高倉監督のフォローがある。またその逆もしかり。いわゆるムチとアメである。

 戦術や起用についても納得するまで話し合いを重ねる。そうして生み出された戦略で数々の強豪を打破してきた実績がこの2人にはある。また、2人ともになでしこジャパンの卒業生であり、選手としても各時代の代表を率いてきた。選手の心情を熟知している上に、求める"代表"の姿勢に一切の妥協はない。OGだからこそ、その言葉以上に重みが出ることもある。

 今回の遠征は高倉監督にとって、選手の能力、チームの現状を把握するためのものであったが、選手にとってもこれから共に走る指揮官の資質を知る機会でもあった。その点でも、この2連戦で手応えを掴んだことで、互いに信頼関係は構築できた。

 リオデジャネイロオリンピック予選敗退で失いかけた自信を取り戻し、全員にチャレンジ精神を植えつけ、可能性を感じさせながら攻守に明確な課題を量産した。一歩間違えれば大敗を喫し、マイナスへ陥る危険性をも含みながら突入したアメリカ遠征は、船出としては大収穫といえる宿題と、新たなチームへの大いなる期待とともに終了を迎えた。

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