天敵イラクを倒してリオ決定。植田直通が晴らした3年2カ月分の悔しさ (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 岸本勉●撮影 photo by Kishimoto Tsutomu

 殊勲の原川は「結果論だけど」と前置きしながらも、「(延長ではなく)90分で決めるという気持ちはあったし、うまく行ってよかった」と笑顔を見せた。


 勝利を確信したように、歓喜を爆発させる日本ベンチ。だが、そんな様子を横目に、センターサークル内で鬼の形相でひとり、仁王立ちしている選手がいた。

 植田だった。

 原川の決勝ゴールが決まった瞬間は、「しびれた。ホントにうれしくて、ベンチに走って行った」という植田だったが、「まだ試合が決まったわけじゃない。あの後やられたら意味がない」と、誰より早くピッチに戻った。

「まずは僕ひとりでも(気持ちを)切り替えて、それからみんなに声をかけて、しっかり切り替えさせるのも僕の仕事」

 チームのために何もできなかったと悔いる自分は、もうどこにもいない。残りわずかな試合時間、もう一度仲間を奮い立たせるため、植田は大きく声をかけた。

「絶対に勝つぞ! 絶対にリオへ行くぞ!」

 そして迎えたラストプレー。イラクが苦し紛れに放り込んできたボールを、植田が力強いヘディングで大きくタッチラインの外に弾き出すと同時に、試合終了を告げる長い笛がピッチに鳴り響いた。

「時間帯的にも、ここで弾けば終わりかなと思った。弾き返した瞬間、笛が鳴って、ホント、うれしかった」

 植田はそう言って、表情を崩した。

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