アジア2次予選レベルに埋没。この勝利を喜ぶ日本代表に成長はない (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 長田洋平/アフロスポーツ●写真 photo by AFLO SPORTS

 ただ、ハリルホジッチはまだ来日して8ヵ月だ。日本とアジア諸国の力関係、つまり日本の立ち位置について、十分な認識があるとは思えない。日本人スタッフのリードが不可欠になる。責任者は原博実専務理事であり霜田正浩技術委員長。しかし、彼らがハリルホジッチとどこまでコミュニケーションが取れているかは不明だ。少なくとも「責任はこちらが取るから、もっと新メンバーを試してみてください」と、ハリルホジッチに進言しているようにはとても見えない。

 もし何かあったら、万が一、2次リーグで落ちたらと、最悪のことを考え、つい慎重になるのが一般的な日本人。原さんや霜田さんも例外ではない。彼らが代表監督なら、テストはもっと控え目になるだろう。

 W杯アジア2次予選。この状態では期間中、チームの強化は進まないと思う。時間の無駄。弱小チームにテストの度合いが低いベストメンバーで向かっていき、順当に勝利を収めても、得るものは少ない。弱いものイジメに近い大勝から学ぶことより、敗戦から学ぶことの方が遙かに大きいのだ。

 前半20分。本田圭佑のセンタリングを武藤嘉紀が落とし、金崎が先制ゴールを決めたシーン。金崎が喜ぶのは分かる。代表初ゴール。相手がシンガポールでも記念すべきゴールに変わりはない。だが、ベンチの選手まで飛び出し、チーム全員がグシャグシャになって歓びを爆発させる姿はどうだろうか。サブまでチーム一丸で戦う日本らしさを見たとは僕は思わない。

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