掟破りのメンバー選考に見る、ハリルJの「泣きどころ」 (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 しかし、足もとの技術や俊敏性といった面で難のあるハーフナーを起用した場合、チーム全体の機能性が落ちてしまう可能性がある。それによってボールがスムーズに動かなくなり、チャンスの回数が減ってしまったのでは本末転倒だ。

 もちろん、バイエルン・ミュンヘンのFWロベルト・レバンドフスキ(ポーランド代表)のような、ときにはサイドに流れて攻撃の起点を作り、それでいてゴール前では確実に決定的な仕事ができるFWでもいれば言うことなしだが、そんな人材を日本で探すのは不可能に近い。

 だとすれば、日本では「ゴリゴリの点取り屋」よりも、「MFもこなせるテクニシャンタイプ」のFWのほうが人材豊富である以上、後者を有効活用しようとするほうが得策であるのは間違いない。

「現代サッカーで点を取るのはFWだけではない。左サイドバックがセンタリングを上げて、右サイドバックが決めることもある」

 ハリルホジッチ監督がそう語っているように、それは現代サッカーのトレンドに沿ったものであるとも言える。結局、ひとりの点取り屋に期待するというよりは、あくまでもチーム全体のパフォーマンスを高めることが決定力アップにつながるということだろう。

 とはいえ、どんなにチーム全体の機能性が高まり、決定機の数が増えたところで、それを決められなければ、むしろフラストレーションはたまるばかり。誰かがチャンスを仕留めてくれてこそ、事態は好転し始める。当然、南野や金崎には、そのきっかけになることが求められる。特に本田や岡崎、あるいは宇佐美貴史(ガンバ大阪)の調子が上がっていない現在、ふたりにかかる期待は大きい。

 得点力を高めるべく、DFを削ってまでFWの数を増やす“パワープレー”に打って出たハリルホジッチ監督。新たな一手は実を結ぶのだろうか。

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