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スター軍団から2部チームへ。元ヤングなでしこ田中陽子が下した勇断 (5ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 チームメイトに同世代が多いこともあり、信頼関係を築くのに時間はかからなかった。それはピッチでのプレイに現れる。

「みんなすごく動くんですよ。ゲームの流れっていうより、ゴールに行くための動きをする。相手にボールを触らせず、最後まで崩してゴールまで行くっていう瞬間。そういうときはすごく楽しいです。今の得点パターンは、真ん中にいながら飛び出したり、サイドにはたいた後に、また受けてシュートっていう感じで、個人で打開っていうよりチームで得点できてる。そういう使って使われてっていうのがいいですよね。なんかちょっとこれは無理かな?っていうパスでも必死に走っちゃうというか、走れるんです(笑)」

 そんな田中の目標は明快だ。

「1部昇格......じゃなくて2部優勝!個人的にはゲームを作りながら、ミスを少なく、ゴール前で仕事して点を取る!今シーズンはゴールっていう結果を出したいです」

 見方によれば、スター選手の中で上手く流れに乗ることができなかった田中の決断は"逃げ"に見えるかもしれない。けれどそんな環境下にいたからこそ、改めて自分自身と向き合い、足元固めをやり直すことは、簡単なようで難しい。INACの3年間で壁にぶつかったからこそ、この決断が彼女には必要だったのである。

 壁を乗り越えるために。そして2020年の東京オリンピックではなでしこジャパンの中心選手へと成長しているために。チームも年々確実に成績を収め、満を持して1部昇格を狙う。その核としてピッチに立つ田中は3月28日の開幕戦で、スタジアムに集まったサポーターに名刺代わりのゴールをプレゼントした。

「"チーム"として成長していきたい」(田中)と見い出したこの選択の是非は今後のピッチにある。田中陽子の再挑戦は始まったばかりだ。

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