アルガルベ杯。苦しんだからこそ生まれた「なでしこの新戦術」 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

「試合前からこの配置は伝えてあった」(佐々木監督)という新布陣は4-4-2をベースにおいているが、状況に応じて宮間が中盤に落ちてボールを配給する4-2-3-1に近い。この形は兼ねてより選手たちが、並々ならぬ興味を示していた布陣でもある。それもあってか、ボールを回すと、あっという間に試合が動き出した。

 47分、左サイドから宇津木が上げたクロスを、タテに走り込んだ宮間が受けると、トラップして左足でゴール。「やりー!」と喜びを前面に表したのは宇津木。入ったばかりのふたりが、開始早々に魅せた。ここからの30分、選手たちは今大会で一番実り多きトライを重ねた。

 新たな2トップは絶妙なタテ関係を保ちながら、相手のDF陣を切り裂いていく。59分、上尾野辺のクロスに前線へ走り込んだ宮間が合わせて追加点。あっという間に試合を決した日本がこのまま2-0で勝利をおさめた。

 今大会の計4試合はそれぞれに異なる表情を見せながら、日本の現状を浮き彫りにした。初戦のデンマーク戦では連係が失われ、苦肉の策で舵を切った速い展開はさらなるズレを生じさせた。それでも速い展開にこだわって宮間とのコンビネーションでトライしたことについて大儀見は「何か形が生まれそうだった」と振り返り、完成型に持ち込めなかったことを悔やんだ。ひとつでもゴールが生まれていれば大きな局面を迎えたかもしれない。と同時に、「前線がスイッチを入れるのは確実に行けると思えた時だけ」(大儀見)にしなければ逆に窮地に陥ることにもなる。苦い経験を経て得た実感でもあった。

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