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「奪う力」の不足。小さくまとまるアギーレジャパン (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images Sport

 日本がボールを失う位置は、おのずと相手陣内深くになる。つまり、相手の攻撃が始まる位置は低い。彼らの技量では、そこから遠く離れた日本ゴールまで、簡単に辿り着けないのだ。

 相手のボールを奪う力が少しでも上がれば、危ない。無失点ではいられないと思う。準々決勝で対戦するUAEはともかく、韓国、豪州は、奪う力もそれなりに高い。豪州と準々決勝を争う中国も、今回は、そこが大きく改善されている。

 日本はどうだろうか。奪う力はどれほど増しているか。ブラジルW杯と比べて、ザックジャパンと比べればどうだろうか。

 僕の目には、全く進歩がないように見える。ヨルダン戦でも、中盤の高い位置で、いい形でボールを奪うシーンはほとんどなかった。

 遠藤保仁、香川真司。ボール奪取能力の低いこの両選手を、俗に言うインサイドハーフで起用していることとそれは大きな関係がある。

 とはいえ、アギーレは、ボールを奪う戦術を得意にしている監督だ。スペインリーグ時代の彼は、それを武器にオサスナ等、ビッグではない中小のクラブを上位に押し上げた実績がある。

 マイボールを起点にものを考えるサッカーからの脱却。すなわち、ザックジャパンに欠けていた要素を補う人物として、アギーレは、うってつけのはずだった。実際、細貝萌をインサイドハーフで起用するなど、就任当初は高い位置で奪おうとする姿勢を垣間見せた。が、このアジアカップには、それとは全く違う方法論で臨んでいる。

 奪う力が不足している選手に、それを教え込もうとしているのなら大いに評価できる。ザックジャパンと同じ選手を使って、サッカーを一変させたなら恰好のいい話になるが、実際はその逆。従来の選手の従来の力に頼っている。

 アジアを制することが日本代表の最大のミッションなら、その方法論でも大きな顔をしていられるのかもしれない。世界を小さいものと捉えるなら、ザックジャパンを継承するサッカーでも、なんとかなるかもしれない。だが我々の目標はW杯だ。半年前、日本はそこで惨敗した。これではマズイというわけで、アギーレを招き、新チームを結成した。そこのところの経緯が、今、すっかり忘れ去られた状態にある。

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