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「アギーレ批判」に見る、日本サッカー界の未成熟 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 益田佑一●撮影 photo by Masuda Yuichi

監督就任わずか4試合ながら、多くの批判を浴びているアギーレ監督。監督就任わずか4試合ながら、多くの批判を浴びているアギーレ監督。 そうした状況にあって、「テスト」を謳うアギーレ監督を、快く思っているメディア関係者は今、どれぐらいいるだろうか。監督就任後、親善試合4試合しかこなしていないのに、早くも批判の声が沸き上がっていることを見れば、決して多いはずがない。

 初采配となるウルグアイ戦(0-2)に敗れると、代表監督就任初戦を白星で飾れなかったのは「加茂周監督以来」という見出しが出た。ホームとはいえ、ウルグアイ相手に敗れたことが、そうした過去を持ち出すほどショッキングな出来事だっただろうか。

 続くベネズエラ戦(2-2)に引き分けると、「我々は強い日本代表が見たいんだ」というファンの感情的な声を引き合いに出して、現状を嘆こうとするメディアまで現れた。

 親善試合で勝利する日本代表が、本当に強いと言えるのか。

 親善試合で何十勝もしても、本番(W杯)で0勝なら、その勝利は何ら意味を持たない。代表チームの"勝利"というものが、親善試合ではないことぐらい、ファンはともかく、W杯を取材した経験のあるメディア関係者ならば、誰しもわかるはずだ。

 それなのに、今度はブラジル相手に0-4で敗れると、ある解説者は「代表はテストをする場所ではない」と不満をぶちまけた。元日本代表監督である岡田武史氏も、ブラジル戦後のあるイベントでこう語ったという。

「代表のユニホームを着る、日の丸をつける、という重みがだんだん軽くなってきたと感じて残念だった」

 テストを好まなかった、岡田氏らしい発言と言える。しかしその結果、岡田ジャパンは、南アフリカW杯本番が近づくにつれて、失速するパターンに陥った。すっかり立ち行かなくなって、監督解任騒動にまで発展した。

 本番ではベスト16という結果を得ることができたが、それは結果オーライそのもの。本番初戦でぶっつけの"奇策"を敢行。メンバー、布陣を一新する博打に打って出て、それが功を奏したに過ぎない。日の丸の重みに固執するあまり、目の前の勝利を欲するあまり、本番に向けての長期プランを誤っていたことは、紛れもない事実だ。

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