平均視聴率48.1%!ドーハの悲劇、テレビ東京の舞台裏 (2ページ目)

  • 布施鋼治●文 text by Fuse Koji photo by AFLO

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 もっとも、最終予選が進むにつれ、日本の雲行きは怪しくなるばかり。初戦のサウジアラビア戦は0-0。続くイラン戦は1-2で敗れ、2戦を消化した時点で、日本は早くも崖っぷちへと追い込まれてしまった。イランに敗れた翌日、寺尾はタブロイド版の夕刊紙が「絶望の一敗」という大見出しをつけたことを鮮明に記憶している。

 寺尾から見ても、その見出しはリアリティを帯びていた。第3戦で戦う北朝鮮に対し、日本はそれまで負け越していたのだから無理もない。第2戦が終わった時点で、藤井や久保田は現地に飛んだ。途中、トランジットで立ち寄ったイギリスのヒースロー空港で、取材クルーのひとりが東京のスポーツ局に電話を入れた。飛行機での移動中に、ちょうど北朝鮮戦が行なわれていたからだ。

「負けていたら、俺たちどうするの?」
「このまま日本にUターンするしかないんじゃない?」

 藤井や久保田が冗談まじりにそんなやりとりをしていると、電話を終え、小走りに駆け寄ってきたスタッフは朗報を口にした。

「3-0で日本が勝ちました」
「やったぁ!」

 テレビ東京の制作チームは声を揃え、色めき立った。

「ひょっとしたら......」

 藤井には、そんな思いが頭をもたげた。

「というのも、そのあとには強いチーム同士の対戦が残っていたので、これからは潰し合いになるだろうと思ったからです」

 それでも、想いは十人十色。久保田は続く韓国戦でも勝ってほしいと願いつつ、それでも無理かなという思いは捨て切れなかった。「それまで日本は韓国に(北朝鮮以上に)分が悪かったので、やっぱりイラク戦は消化試合になるかなぁと考えていたんですよ」。

 そして、迎えた韓国戦。三浦知良がゴールを決めると、スタジアムで観戦していた久保田は思わず隣人と抱き合って喜んだ。結局、日本はその1点で韓国を下し、最終戦のイラク戦に望みをつないだ。

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