【U-16】若きなでしこが成長中。新チームで掴んだアジアチャンピオン (2ページ目)
実力差が激しいことはアジアの課題でもあるが、グループリーグ内ではよくあること。
しかし、まさか決勝までガチンコ勝負をせずに勝ち上がることなど、これまでは考えられなかった。今大会は来年3月にコスタリカで行なわれるFIFA U-17女子ワールドカップの予選を兼ねている。上位3チームにその出場権が与えられるわけだが、組み分けが決定した段階で、日本の決勝トーナメント進出は固かった。
実際、ワールドカップ出場権は誤算なく手に入った。接戦を制した勝利はチームをより強固なものにするが、圧勝は時にチームに影を作ることもある。ましてやこのチームは初めてタイトルに挑むのである。決勝前に「本当は実力の拮抗した相手と戦っておきたかった」と語った高倉麻子監督の言葉にも頷(うなず)ける。北朝鮮は身体がブレず、空中戦はもちろん、競り合いになれば日本は劣勢に陥る。予想通り、押される展開になり、ゲーム内での修正はできなかったが、明確な課題となった。その中で勝利を手繰り寄せたことは自信につながるはずだ。
キャプテンを任された杉田妃和は、今年2月に生まれたこのチームを牽引してきた。昨年のFIFA U-17女子ワールドカップベスト8のメンバーだった杉田は、当時のチームでは15歳の最年少で出場。それも世界大会の直前に招集された新戦力としてだった。しかし、緊張と初めて経験する世界大会への戸惑いから、自分の考えを言葉にすることができなかった。
そんな経験を経て、今大会の杉田は人一倍声を出した。「言いにくいことも頑張って言えるようになってきました」(杉田)。
プレイでも成長が著しかった。トップ下やボランチをこなす杉田が力を発揮するのは攻撃。イラン戦でマンツーマンをはられた杉田は自分が引きつけ役になり、有効にスペースを生み出した。
準決勝では、自身のドリブルからのシュートはもちろん、左右サイド奥への散らしや、強気など真ん中をぶち破る前線へのキラーパスなど、高いポテンシャルを見せつけた。決勝では、攻撃のみならず、深い位置までボールを追い、守備にも貢献した。大会MVPを獲得した杉田の成長は、来年の世界の舞台に向けて、大きな追い風になるだろう。
2 / 3