イングランドに引き分け。澤&宮間不在の中、生まれた新たな可能性 (2ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 その反面、前半41分の失点に関しては、最後に選択を絞り切れなかった悔しさと、パスを選択した相手へのリスペクトが入り混じった。「ペナルティエリア周辺だったから、シュートもあるとケアに入った。あそこでパスを出されるとは......」と岩清水梓が悔やむように、ヤンキーのラストパスは裏へ走り込んでいたアルコにぴたりと収まり、先制点を奪われた。寄せたものの、二手三手とギリギリでかわされ、あっという間の失点だった。

 それでも、ペース自体は日本が握っていた。大儀見、大野の前線からのプレスが効いて、イングランドは次第に余裕をなくしていった。確かに日本がハメていた前半だった。

 両者ともに足が止まりはじめた後半は、メンバー変更などの影響もあり、大儀見がかなり中盤に落ちて、攻撃のとっかかりを掴もうと奮闘していた。だが、彼女にしてみればこれも想定内。前日から大儀見の頭には「中が詰まりはじめたら、自らがポジションを下げる」という考えがあった。しかし、思った以上にポジションは右サイドへ押し込まれ、一旦預けてタテにボールを流させることが叶わなくなった。必然的にゴールまでの距離がさらに開く。前半のようにシンプルにタテへの展開は望めない。そこをカバーしたのが大野だった。

 同点ゴールはそんな大野と大儀見の頭脳的なポジショニングから生まれたと言ってもいいだろう。後半31分の同点ゴールの形を作ったのは大野のプレイからだった。大野が前を向き、ドリブルで運び始める。右には大儀見の姿。それでも、大野は左サイドをうかがっていた。「ちょっとナホ(川澄)の上がりが遅かったんで、自分で行こうかとも思ったんですけど、ナガ(大儀見)が(DFを)引きつけてくれてたんで空いたスペースで自分がタメを作れた」(大野)。そして川澄が上がってきたタイミングでスルーパス。あとは川澄が相手GKの動きを確認しながら決めるだけだった。

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