イングランドに引き分け。
澤&宮間不在の中、生まれた新たな可能性

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

なでしこジャパンでは初めてボランチのポジションに入った熊谷紗希なでしこジャパンでは初めてボランチのポジションに入った熊谷紗希 なでしこジャパン欧州遠征の初戦。相手はドイツワールドカップで唯一黒星を喫したイングランド。先制された日本は、後半31分に川澄奈穂美のゴールで同点に追いつくも、痛み分け。リベンジとはならなかった。

 20日のニュージーランド戦で退場処分となった宮間あやが出場できず、澤穂希をケガで欠いたこの試合で、ポイントとなったのは阪口夢穂と熊谷紗希のボランチコンビだった。元々熊谷は所属する1.FFCフランクフルトでもボランチを務め、U-20時代に佐々木則夫監督の元でもボランチ経験があり、そのポジション自体に違和感はない。が、なでしこジャパンの中でのボランチ起用となると話は別だ。

 なでしこにとっての生命線とも言えるこのポジションでの駆け引きはゲームを左右する。押しも押されもせぬなでしこのセンターバックに成長した熊谷をアンカー役に、日テレ・ベレーザではトップもこなす攻撃力に長けた阪口を上がり目に配置。これがピタリとハマった。高い位置からのプレスで相手がブレたところをすかさず熊谷が拾えば、ただちに阪口、大儀見優季、大野忍ら攻撃陣が切り替える。この10日間、取り組んできたタテパスを生かした攻撃に展開していく中で、阪口&熊谷のボランチは初挑戦ながらも、その役割を十分に果たしていた。「もう少しボールに触って、攻撃に関わりたかった」と熊谷が言うように、実用的なオプションとなるには今しばらく時間は必要だが、可能性は確実に広がった。

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