【日本代表】細貝萌
「自分には自分の良さがある。ヤットさんとは違う」 (2ページ目)
「あのとき、すごくコンディションが良くて、試合に出たら『絶対にやれる』と思っていたんです。最初のフランス戦では、後半17分から出て、攻め込まれる中、最後まで耐えることができた。チームの勝利にも貢献することができた。次のブラジル戦までの間も、練習ではすごく調子が良くて、試合でもかなりいけるな、と思っていたんです。ところが、(ブラジル戦前の)ミーティングで、ベンチだって言われて......。すごく複雑な気持ちになりましたね。試合に行くバスの中では、いつもなら音楽を聴いて行くんですけど、そのときは音楽も聴く気になれなかった。結局、ブラジル戦ではフランス戦と同じ時間に途中出場したんですが、メンタル面を高められなくて、気持ちが乗らず、何もできなかった。
そこで、自分がいけなかったな、と思ったのは、自分はできると思い込んでしまい、(自分が先発だと)追い込んでしまったこと。ヤットさん(遠藤保仁)や長谷部(誠)さんより、自分のほうがいいとかではなく、選手起用は監督が決めることなのに、(先発できなかったことに)メンタルを揺さぶられてしまった。だから、ブラジル戦後はかなり自己嫌悪に陥ったし、プレイで結果を残せなかったことがすごく悔しかったです」
ブラジル戦後、細貝は憮然とした表情でミックスゾーンを立ち去った。
しかし、年が明けるとチャンスが巡ってきた。今年2月に行なわれた親善試合のラトビア戦である。細貝はスタメン出場を果たした。
試合では、ファールをせずにボールを奪う、というテーマを自ら課していた。そして細貝は、ラトビアの攻撃の芽をしっかりと摘んだ。前半でベンチに下がったものの、本人も「ほぼ(テーマは実践)できた」という手応えを感じていた。が、試合後、細貝を待っていたのは、後半から細貝に代わって出場し、試合を劇的に変化させた遠藤との比較だった。
「試合後、(ミックスゾーンでは)ヤットさんと比較されて『自分には何が足りないか』とか、『(遠藤の)後継者になるためにはどうすればいいか』とか、聞かれました。なんか、ヤットさんと同じような仕事を求められて、正直『何で?』と思いましたね。確かに(試合では)ヤットさんに代わって、僕が入ることが多い。でも、ザッケローニ監督からは、ヤットさんのようにプレイしてくれ、なんて言われたことは一度もない。選手も、誰ひとりとして、そんなことは言ってこない。僕とヤットさんのプレイスタイルは明らかに違うし、選手が変われば、当然チームのスタイルも変わるわけじゃないですか。僕がピッチに入ったときは、より守備が安定し、チーム全体のバランスが取れると思っている。それが、自分の良さです。もちろん、自分もヤットさんのすごさは(一緒に)プレイする度に感じています。ただそれを、自分に期待するというのは、違うと思うんですよ」
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