【なでしこ】「澤さんのために」。大野忍、キャプテンとしての決意 (2ページ目)
その1分後、大野はシーズン1得点目をマークする。意外にもそれはFKだった。絶好の位置。いつものようにソヨンが蹴る準備をして、ポジションを取っていた。しかし、大野の気迫を感じたソヨンは、蹴る直前に大野を呼び寄せ「蹴って」と託す。大野の蹴ったボールは美しい弧を描いてゴールへ吸い込まれていった。
「ヘディングでのゴールぐらいめずらしい(笑)」と自身も驚く得点。チームメイトの祝福を受けながら、大野が目指したのはベンチで待つ澤のところだった。「今日はゴールを決めたら、走っていくからね!ちゃんと前に出てきて受け止めてね」と約束していた。
大野のゴールを見た澤はゆっくりとベンチから立ち上がるとラインぎりぎりのところで彼女が来るのを待っていた。大野は迷わずに飛び込んでいった。
「澤さんのためにっていう気持ちは大きかった。大量得点しても、やっぱり(試合中に)『こういう局面で澤さんがいてくれたらな』って思うことは多かった。その偉大さをまた感じさせられちゃったな」(大野)。
後半にはフレッシュなメンバーを活かすため、大野は自分のポジションを下げて起点役を担ったことで、ゴールからは距離が離れてしまう。澤からも「私がいたら、もうちょっとシノ(大野)を前にいさせてあげられたね」と声をかけられた。結局、この日、大野の得点は1点にとどまった。
昨季はチームメイトの川澄と得点王のタイトルを分け合った大野。今年は単独でのタイトル獲得を目指す。さらに闘志を燃やすのは勝利へのこだわりもあった。
「昨年はベレーザや浦和に勝ちきれなかった。『優勝しても、手強いところには勝ててない』ってところが自分ではすごくひっかかってるんです。言われるのもイヤですしね(笑)。だから今年は初戦からガツガツ行くって決めてた」と話す。どんな相手に対しても、全力でゴールを奪う。「1試合1ゴールは決めたい!」(大野)。
強い決意を抱く大野の周りを活かしながら自らも活きるプレイは、とこまで高めることができるのか、そのゴール数とともに注目したいところだ。
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