【なでしこ】「澤さんのために」。大野忍、キャプテンとしての決意
なでしこリーグの開幕戦。ゴールを決めてすぐに、大野はベンチにいる澤のもとへ駆け寄った ワールドカップ優勝で注目され、一時は動客数が2万人を超える試合も出たなでしこリーグ。日本中へのひと通りのお目見えが済んだ今季は、日本女子サッカーの真価が問われる年となる。4月16日、全国各地でその勝負のシーズンが幕を開けた。
とくに関心が高かったのは、INAC神戸レオネッサvsスペランツァFC大阪高槻のカード。2月のなでしこジャパンのポルトガル遠征中に良性発作性頭位めまい症を発症した、神戸の澤穂希が復帰を遂げるどうかに注目が集まった。
「出すかどうか決めかねていたが、まだセットプレイを試せていなかったので、本人とも話してムリに今日出場する必要もないということになった」と神戸の星川敬監督も語るように、澤の復帰は次節以降に持ち越しとなった。しかし、ウォーミングアップでも元気な姿を見せた澤は、順調に調整が進めば復帰は近いはずだ。
澤不在の試合でも、神戸の戦いに不安要素はない。新加入の京川舞をトップに据え、大野忍、川澄奈穂美、高瀬愛実らなでしこジャパンのメンバーと韓国代表のチ・ソヨンがガッチリと脇を固める。"より攻撃型のサッカー"を目指す強力な布陣はさらに威力を増していた。
19分に川澄、大野のコンビネーションから最後はソヨンがトラップで相手をかわして先制ゴール。勢いづいた神戸の怒濤のゴールラッシュは止まらず、前半だけで京川のリーグ初ゴールを含む4得点。後半にはさらに3得点を加えて圧勝した。
中でも、気をはいていたのは今年から新キャプテンを任された大野。チームの得点源であり、攻撃の起点でもあるが、この開幕戦にはある決意があった。それは「1点でも多く自分で決める」こと。
いつもと違う大野が見られたのは1点リードで迎えた30分のこと。川澄からの絶妙なパスを受けた大野は完璧なタイミングでシュートを放つがはじかれてCKとなった。そのボールをすぐさま拾った大野はコーナーへと走ると、そのまま自らのキックインで試合をリスタートさせた。
このときすでに試合の流れは完全に神戸にあり、大量得点の香りは十分に漂っていた。けれど、大野は貪欲だった。「攻めのいい時間がきていた。なんとしてもゴールが欲しかったし、この時間に取りたかった」と大野は振り返る。
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