【プロ野球】「阪神は自前で育て、巨人はFAで集めてきた」 広岡達朗が指摘する両軍の"決定的な差"「その歪みが今、表れている」 (3ページ目)
広岡は、佐藤がメジャーへ移籍すれば、阪神の戦力は大きく低下すると見ている。それでも育成においては、今のやり方を続けるべきだという。
「阪神はドラフト戦略を含め、自前の選手をきちんと育ててきた。一方の巨人は、豊富な資金力を武器に即戦力を獲得し、FAでも他球団の主力を集めて戦力を補強し、優勝してきた。その歪みが、今になって表れているんだ。そんなことは前からわかっていたことだ。では、なぜ叩き上げの高卒の選手がなかなか台頭してこないのか。はっきり言えば、育成システムと指導者に問題があるからだ」
【大型補強ではできない伝統の継承】
広岡が問題視するのは、若手に技術を教える仕組みだけではない。巨人が長い歴史のなかで培ってきた「勝つための考え方」を、次の世代へ伝える環境が失われつつあることにも危機感を抱いている。
「巨人の伝統というのは、偉大な選手から次の世代へと受け継がれてきたものなんだ。一流と呼ばれる選手には、それぞれ自分なりの理論がある。だからこそ、長く結果を残し続けることができる。かつて松井も、落合(博満)から多くのことを学んだ。狙い球を絞り、その球が来るまで意図的にファウルで逃げる。そして、勝負球が来たら一発で仕留める。そうした4番打者としての考え方を学んだからこそ、あれだけの打者になれたんだ。
世代交代を成功させるには、若手にとって手本となるベテランが必要なんだよ。技術だけじゃない。どう考え、どう準備し、どう結果を残すのか。それを身近で学べる存在がいなければならない。はたして、今の巨人にそういうベテランがいるのか」
ベテランと若手の融合こそが、常勝軍団を築く礎となる。だが今の巨人には、若手を導くベテランも、それを支える指導者の力も足りていない。広岡は苦虫を噛み潰したような表情で、そう指摘する。
「過渡期にあるからこそ、才能ある若手をどう育てるのか、その指導方針をしっかり確立しなければいけない。そうしない限り、巨人は"なんでもほしがる"長嶋政権以降のツケを、これからも払い続けることになるぞ」
目先の勝敗ではなく、5年後、10年後の巨人を誰が支えるのか。阪神との3連戦で浮き彫りになった差を埋めるために必要なのは、大型補強ではない。若手を育て、次の世代へと「巨人の野球」をつないでいく。その覚悟を持てるかどうかが、常勝軍団復活への分岐点になる。
著者プロフィール
松永多佳倫 (まつなが・たかりん)
1968 年生まれ、岐阜県大垣市出身。出版社勤務を経て 2009 年 8 月より沖縄在住。著書に『沖縄を変えた男 栽弘義−高校野球に捧げた生涯』(集英社文庫)をはじめ、『確執と信念』(扶桑社)、『善と悪 江夏豊のラストメッセージ』(ダ・ヴィンチBOOKS)など著作多数。
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