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【プロ野球】松井秀喜でも原辰徳でもない... 広岡達朗が巨人再建を託す意外な次期監督候補とは? (3ページ目)

  • 松永多佳倫●文 text by Takarin Matsunaga

【広岡達郎が挙げた2人の名前】

 では、誰を監督にすればいいのか。

「考えられるのは、内部昇格で川相(昌弘)だろうな。2023年に一軍総合コーチに就任し、24、25年とチームをリーグトップの守備率に導いた。川相のことは現役時代からよく知っているが、非常に勤勉な男だし、言うべきことはきちんと言える人間だ。ただ、少し大局を見過ぎるところがある。常に最善手を求めるあまり、慎重になり過ぎて動けなくなる傾向があるんだ。その点だけが気がかりかな。

 それでも、今の巨人を立て直すのであれば、まずはディフェンスからだ。戦国時代だって同じだろう。守りを固めてから攻めに転じる。組織の立て直しというのは、そういうものだ。もちろん、オフェンスの強化も重要だ。奇襲のような攻撃や思いきった策で一時的に流れを変えることはできる。だが、それはあくまで短期的な効果に過ぎない。本当に強いチームをつくるには、地力のある攻撃力を築かなければならないし、それには時間がかかる。だからこそ、まずは守備を整え、チームの土台を固めることが先決なのだ」

 まるでレジェンドなど必要ないと言わんばかりに、広岡氏は川相氏の内部昇格を推すが、もうひとり挙げた人物がいた。

「もしチームを劇的に変えたいのであれば、工藤公康がいいんじゃないか。あいつは1982年から2010年まで、じつに29年間も現役を続け、西武、ダイエー(現・ソフトバンク)、巨人、横浜(現・DeNA)、そして再び西武と渡り歩き、さまざまな野球に触れてきた。40歳を過ぎてからもオフにはアメリカへ渡り、最新のトレーニング理論を学んでいた。

 引退後は筑波大学大学院で運動生理学や心理学などを学び、指導者としての知識も身につけた。なにより大きいのは、ソフトバンク監督時代に日本一を4度も成し遂げた実績だ。しかも巨人OBでもある。条件だけを見れば申し分ないだろう。勘違いしてもらっては困るが、工藤を推すのは広岡イズムを継承しているからではない。実績と能力を公平に評価したうえでの意見だよ」

 はたして、シーズン終了後、巨人の監督は誰になるのか。もし橋上監督代行が優勝したら......。チームの快進撃とは裏腹に、上層部は難しい判断を迫られている。勝てば勝つほど、監督問題は複雑になる。今、最も頭を抱えているのはグラウンドの選手たちではなく、むしろ球団首脳陣なのかもしれない。


広岡達朗(ひろおか・たつろう)/1932年2月9日、広島県生まれ。呉三津田高から早稲田大に進み、54年に巨人に入団。1年目からショートの定位置を確保し、新人王とベストナインに選ばれる。堅実な守備で一時代を築き、長嶋茂雄との三遊間は球界屈指と呼ばれた。66年に現役引退。引退後は巨人、広島でコーチを務め、76年シーズン途中にヤクルトのコーチから監督へ昇格。78年に初のリーグ優勝、日本一に導く。82年から西武の監督を務め、4年間で3度のリーグ優勝、2度の日本一に輝いた。退団後はロッテのGMなどを務めた

著者プロフィール

  • 松永多佳倫

    松永多佳倫 (まつなが・たかりん)

    1968 年生まれ、岐阜県大垣市出身。出版社勤務を経て 2009 年 8 月より沖縄在住。著書に『沖縄を変えた男 栽弘義−高校野球に捧げた生涯』(集英社文庫)をはじめ、『確執と信念』(扶桑社)、『善と悪 江夏豊のラストメッセージ』(ダ・ヴィンチBOOKS)など著作多数。

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