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【日本シリーズ】柳町達の四球が起点となった「95イニングぶり」の覚醒 ソフトバンクが10得点の猛攻でタイに (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro

 サッカーで「ケチャップドバドバ」と表現されるのと同じで、目覚めたソフトバンク打線は初回の3得点につづき、2回裏には大量6点を追加。周東がタイムリー三塁打、近藤健介にもタイムリー二塁打が飛び出し、仕上げは山川の左中間特大3ランだ。

 なお、周東はこの日5打数5安打をマークし、1試合5安打の日本シリーズ新記録を樹立した。終わってみれば10対1の圧勝だ。1勝1敗のタイに戻して、第3戦からは甲子園球場に舞台を移す。

【あわや反撃ムード消滅の大ピンチ】

 ソフトバンクは一体なぜ、目を覚ましたのか。

 起点をつくったのは柳町ではなかろうか。

 大失態を挽回した。初回無死一、二塁で初球バントの構えからストライクゾーンの球だったにもかかわらずバットを引いたため、二塁走者の柳田が飛び出してアウトになった。その間に周東は進塁して一死二塁。その後、柳町が簡単にアウトになっていれば、反撃ムードは完全消滅してしまうところだった。

 ここで柳町は持ち前の粘り強さを発揮する。フルカウントまでもっていき、勝負の6球目。外角低めのナックルカーブを見極めてフォアボールを選んで出塁したのだ。

「ストライクだったので、ちゃんとやらないといけない。正直『やってしまった』と思いました。ただ、まだ1アウト二塁だった。とにかく僕がアウトになってはいけない。フォアボールでつなぐことができたのでよかったです」

 ところで、最後の1球は本当に際どいコースだった。あれを自信満々に見極めたのは本当に見事だと水を向けると、柳町は苦笑いを浮かべた。

「いや、正直自信はなかったです。手が出なかったというか、カーブがあそこに決まったら仕方ないという割り切りもありました。それよりもストレートを空振りするのが嫌だったので」

 柳町は、これまで運に恵まれてこなかったことが多い。レギュラーをつかみかけたと思うと、翌年には強力なライバルがチームに加わるなどしてポジション争いから弾き出されてきた。今季も開幕は二軍スタートだった。

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