【日本シリーズ】有原航平が敗戦のなかで見せたエースの意地 内角攻めに宿るソフトバンクの戦略的布石 (2ページ目)
先のCSファイナルもそうだった。日本ハム強力打線と対峙するなかで、本当にしつこく胸元をえぐりつづけた。なかでもフランミル・レイエスと郡司裕也への攻め方は極端だった。
レイエスの場合、レギュラーシーズン中のコース別成績を見てみると、ストライクゾーンの内角高め(.379、2本)、内角真ん中(.333、1本)、内角低め(.407、1本)のデータが示すとおり、本来は内角に強いことがわかる。それでもインコースを攻めつづけた。郡司にもそれは同じことが言えた。
CS後、バッテリーを組んだ海野隆司に聞くと、「郡司はCSファイナルが始まる前からキーマンのひとりと考えていました。そして第1戦でレイエスに(1本塁打含む3安打と)打たれたので」と舞台裏を明かしてくれた。
【徹底したインコース攻め】
そして日本シリーズ第1戦である。
有原と海野のバッテリーは、3番を打つ森下を最も警戒していたように見えた。まず第1打席。森下がバットを構えると、海野がスルスルと内角に体を寄せ、つづけざまにツーシームを要求。結果的に有原の投げた球がやや甘く入ってしまい三塁線を破られる二塁打を浴びたが、意図を感じる配球だった。
第2打席も初球は内角に食い込むツーシームだ。その後はフォークを3球つづけて、空振り三振を奪った。
そして3打席目の勝負である。冒頭で記した6回表無死二、三塁の場面だ。外角低めにはフォーク、内角をえぐるのはツーシームという配球を見せる。7球の勝負で真ん中付近にいったボールはひとつもなかった。
最後はまさに胸元へのツーシーム。完全に詰まらせてのショートゴロだったが、当たりが弱すぎたのと内野がそもそも定位置に守っていたため、三塁走者の生還を許した。
この回は走者を背負い、まず同点にされ、なおも走者を置くというタフな局面がつづいた。それでも次打者の佐藤輝への初球で内角高めにカットボール、2球目で足元にカットボールを投げ込んだ。ここも結果的に勝ち越し二塁打を打たれはしたが、意図は感じられた。つづく大山悠輔にも内角いっぱいのツーシームを2球つづけて、どん詰まりのピッチャーゴロに仕留めた。
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