【プロ野球】球界一の小兵、身長164センチの西武・滝澤夏央はいかにしてレギュラーの座をつかんだのか (4ページ目)
【小さい体をマイナスに捉えたことはない】
滝澤は、仁志コーチの指摘をどう受け止めたのか。
「大前提として、僕はホームランバッターではありません。思いきりスイングして芯に当てても、ホームランになる確率は低いんです。だから、どんな球でもライナーで打ち返すことを意識しています。そのためには、やっぱりバットを最短距離で出して、無駄のないスイングをすることが大事です。スイングスピードも速くないので、動きに無駄があれば、その分だけ投球に差し込まれてしまう。そこは意識して変えたかなと思います」
滝澤と仁志コーチに共通するのは、ともにプロ野球選手としては身長が低い部類に入ることだ。滝澤の身長164センチに対し、仁志コーチは171センチだ。
それでもシーズン28本塁打を放ったこともある仁志コーチは、「自分が小さいと思ったことはない」と話していたことがある。では、滝澤はどうだろうか。
「もちろん思っています。だからこそ『負けたくない』という気持ちは強いと思います。まあ、体は明らかに小さいですけどね(笑)。でも、自分が小さいからこそ、ほかの人にはできないことが絶対にあると思っています。マイナスに捉えたことはないです」
周囲と比べて発揮できる力に限りがあるなかで、バッティングでは一定以上の打率を残して勝負する。滝澤は極めて難しいことにチャレンジしようとしているのだ。
プロ野球というエンターテインメントにおいて、これほど魅力的な選手はそう多くない。滝澤は、周囲の選手とは明らかに異なる特徴を持っている。
では、ほかの選手が簡単にマネできないような守備力をはじめ、滝澤はプロ野球のグラウンドに立つ能力をどう養ったのか。その背景には、滝澤ならではの恵まれた環境があった。
著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。
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