【プロ野球】球界一の小兵、身長164センチの西武・滝澤夏央はいかにしてレギュラーの座をつかんだのか (3ページ目)
「仁志さんに『確率が悪すぎる』と言われたんです。練習の遅いボールに対してすら確率が悪いのなら、試合で打てるはずがないなと感じました。そこで大事なのは技術というより、自分の考え方次第だと思ったんです。
それまでは『思いきり打とう』とか、そんなことしか考えていませんでした。 でも、『どんな球が来てもライナーで打ち返す』という意識さえあれば、練習の1球1球から雑なバッティングにはならないはずです。だから、今までの『遠くに飛ばそう』とか『思いきり振ろう』という考え方はやめました」
仁志コーチにとって、滝澤は指導をするのが難しい選手だった。前足を大きく上げるとか、バットをヒッチするとか、見てすぐにわかるような特徴的な動きがないからだ。仁志コーチが説明する。
「よく言えば、滝澤には悪い癖がない。そういう選手が、結果が出ない時ってやりようがないのでとても難しいんですね。周りからアプローチするにあたって、何がよくなくて結果が出ないのかがわからないんです。そこで何ができるかと言ったら、シンプルに動きの理想を求めていくしかない」
打撃動作のフェーズごとに理想を求め、一連の動きとしてうまくつなげていく。仁志コーチが滝澤に処方したのは、「無駄を省く」ということだった。
「彼自身も感じているように、芯に当てる確率を高めることこそが光明というか......。長打力で勝負するタイプではありませんから。バッターとして打率で勝負するのは、一番難しいことなんです。調子によってどうしても上下しますからね。パワーのある選手なら、当たりさえすればホームランになりますし、その1本は決して消えることはない。
でも打率で勝負というのは、要は"ボールを見ている感覚"で勝負をしている。その感覚って、体の状態がよくなかったらズレるし、何かによって意識を変えられてしまう。たとえば顔付近にボールを投げられて、自分の意識がコロっと変わってしまうこともある。そういう意味で非常に難しいので、僕らがやってあげられるのは、とにかく理想に近く、近くっていうことくらいなんですよね」
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