【プロ野球】現役引退の田中健二朗が振り返った「木塚敦志との死闘の日々」と「忘れられない2つのシーン」 (2ページ目)
現役引退することをベイスターズ関係者で最初に伝えたのは、現在アマチュアスカウトを務めている木塚氏だった。そして引退会見ではビデオレターが流れた。画面の向こうで木塚氏は優しく、時に感極まる様子で語りかける。
「健二朗、長い間、本当におつかれさまでした。思い出はたくさんありますけど、まだ二軍暮らしだった横須賀でのキャッチボール、甲子園優勝投手を感じさせる勇気を持ったあのスローカーブ、どんな場面でもマウンドに向かってくれるブルペンから見たあの後ろ姿、クライマックス・シリーズ(CS)でチームを救う一塁牽制......まだまだたくさんありますが、毎日、ブルペンで準備をしてもらって投げ抜いてくれて本当に感謝しています。ありがとう」
その映像を田中は、口を真一文字に結び見つめていた。瀬戸際を経験した11年前のあの日々のことを思い出していたのだろう。
【忘れられない2つのシーン】
田中にベイスターズ時代の忘れられないシーンを聞くと2つ挙げてくれた。
ひとつは、2021年9月21日での阪神戦(横浜スタジアム)だ。この試合はTJ手術からの復帰戦で、じつに1092日ぶりの一軍登板だった。7点リードの9回表二死の場面で田中の名がコールされると、ハマスタは渦巻くような歓声に包まれた。田中は「本当にうれしかったし、鳥肌が立ちましたよ」と語り、今でもあの光景や脳裏に焼き付いているという。
そしてもうひとつは2016年、ベイスターズが球団史上初めてCSに進出した時のことだ。木塚コーチ率いるブルペン陣は、田中のほかに砂田毅樹、三上朋也、山﨑康晃といった勢いのあるメンバーが揃っていた。
東京ドームを舞台とした巨人とのCSファーストステージで、田中は第1戦でホールドをマークし勝利に貢献。そして1勝1敗で迎えた第3戦、3対3の同点の9回裏に田中はマウンドに上がった。1点もあげられない場面だったが、先頭打者の村田修一に内野安打を打たれ出塁されてしまう。すると巨人の高橋由伸監督が動いた。足のスペシャリストである鈴木尚広を代走で送ったのだ。当時のことを田中は振り返る。
2 / 4