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中畑清が篠塚和典と振り返る、野球人生を変えた日米野球のホームラン 現役時代はお互い「ライバルとしても見ていた」 (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo

【当時は、メジャーに比べると「我々は蚊みたいなもん」】

――当時のレッズは"ビッグ・レッド・マシーン"と呼ばれ、ピート・ローズやトム・シーバー、ジョニー・ベンチ、ジョージ・フォスター、ジョー・モーガン、ケン・グリフィー(父)など数多くのスター選手がいましたが、プレーを目の当たりにしていかがでしたか?

中畑 スター軍団でしたからね。「勝てるわけがない」と思っていました。

篠塚 巨人軍を創設した正力松太郎さんの遺訓のひとつに、「巨人軍はアメリカ野球に追いつけ、そして追い越せ」というものがありました。それだけ手の届かない相手だったわけですが、それは戦ってみて実感しました。
 
中畑 4番のジョージ・フォスターが堀内恒夫さんから打ったホームランはすごかった。後楽園球場の左中間の最上段にある看板にぶつけたからね。

篠塚 投手が投げるボールなんかも全然違うなと。やっぱり重いですし、打っても「あれっ?」ていう感覚で思ったよりも飛ばなかった。パワーの差はすごく感じましたね。

中畑 今はメジャーとの差がなくなってきているけど、当時のメジャーといえば別世界のような捉え方をしていたよな。

篠塚 日本の野球はナメられていましたよね。メジャーの選手たちは日本に観光気分で来て、それでも勝てないわけですから。

中畑 でも、巨人が初戦で勝ったもんだから、2戦目以降は本気モードに入っていたよな。

――ピート・ローズといえば"安打製造機"として知られていますが(※)、ハッスルプレーも代名詞でした。

※イチローは日米通算4367安打。ピート・ローズはMLB通算4256安打で、シーズン200安打10回はイチローとタイ記録。

中畑 あの魅せ方ですよ。寒いのに半袖でプレーして、ヘッドスライディングをしてくるんです。普通、ヘッドスライディングは長袖を着てなければダメなのですが、そういうことはお構いなし。ケガのリスクを無視しての全力プレーと、迫力がすごかった。「そういったプレーで魅せるのがスターなんだな」と勉強になりました。影響を受けて自分もヘッドスライディングをしたけど、絵にならなくて(笑)。

篠塚 我々は蚊みたいなもんですよ(笑)。メジャーの選手たちは、それこそライオンが迫ってくるような迫力でバーッて走ってきましたよね。ピート・ローズには特に迫力を感じました。パワーもそうだし、ひとつひとつのプレーにしても全然違うので、「メジャーを目指そう」という気持ちにはなりませんでしたね。

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