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阪神好調の裏に潜む「藤川采配」の不安要素 名コーチ・伊勢孝夫は「勝利に飢えた時こそ本当の姿が見えてくる」 (2ページ目)

  • 今シーズンから阪神の指揮を執る藤川球児監督 photo by Koike Yoshihiro

 なぜそこが気になったのかと言えば、今季の戦いを見ていて、記録に残らない小さなミスがやけに目につく。その背景には、監督からの"直言"の少なさが影響しているのではないかと思ったからだ。

 プロ野球の世界では、バッティングなら打撃コーチ、ピッチングなら投手コーチといったように役割分担がある。だからこそ、たまに監督が選手に直接指導すると、それだけでニュースになったりするのだ。

 ただし、あくまでコーチが指導するのは"技術"であって、"意識"の部分までは徹底できない。これは私が近鉄やヤクルトなどで、長年コーチを務めた経験から強く感じたことだ。それに意識の部分を指摘しても、なかなか選手の心には響かない。

 こうした場面で、前任の岡田彰布監督はメディアを使って、選手たちに"意識"を植えつけようとした。時には「草野球やっとんのか!」「そこから教え直さんとあかんのか!」と厳しい言葉を浴びせた。なかには、「ふざけるな!」と思った選手もいただろう。

 当然、監督と選手の関係は悪くなるが、その代わりに緊張感が生まれた。ここで重要なのは、岡田監督はどれだけ叱責しても、選手を使い続けたということだ。彼が選手を嫌っているわけではなく、必要不可欠な戦力として信頼していた。その厳しさの裏にある信頼は、選手にも伝わる。だからこそ、「次こそは!」と選手も奮起したのだ。

【起用法で緊張感を生む】

 では藤川監督はどうか。メディアを通して批判しないのは、おそらく現役時代に嫌な思いをした経験があったからだろう。

 その一方で、3失策の木浪はスタメンから外れた。これは懲罰的な意味と、小幡竜平との競争を促す意味合いもあっただろう。言葉ではなく、起用法で緊張感を生む。それが藤川監督のスタイルなのかもしれない。

 それに打順やリリーフの順番を固定しないのも、彼の戦い方のひとつだ。開幕から4番に据えていた森下翔太を3番にして佐藤輝明を上げたのも、柔軟に戦う姿勢の表れだろう。このようにして選手同士を競わせるのは悪いことではない。ただ、そのような戦い方で勝ち続けるのは、想像以上に難しい。

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